研究課題/領域番号 |
20K03248
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤井 純子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 助手 (50228946)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地学教育 / 初・中等教育 / ウェブ教材 / 教材開発 / 地域地質データベース |
研究実績の概要 |
本研究は,福井県の地域地質データベースに各スポットで観察できる石ころ・砂等の詳しい情報を連動させてデータベースを充実させるとともに,それらのウェブ教材や実物教材を活用した地学教育手法を開発することを目的としている。現在,福井県の地域地質データベースに連動させるための準備を進めている。 本年度は,特に河川礫のデータを充実させるべく調査を行った。河原の礫は川の増水により泥を被り観察しにくい場合もあるが,観察場所の選定や教材化の工夫により,充分教材として活用できる。 福井県の主要な河川である九頭竜川において,観察に適した複数の河原を選定し,基礎データとなる礫種構成や礫のサイズの調査および調査手法の開発を行った。特に,九頭竜川とその大きな支流である真名川が山地から大野盆地に出たところでは,礫の観察しやすい広い河原を形成している。礫種はその上流の地質をよく反映しており,特徴があって判別しやすい岩石が多ことがわかった。また,異なる岩石を供給する支流との合流地点よりも下流側では,その上流側とは明らかに礫種構成が異なることもわかった。これらの成果は,各学年の学習内容に合わせた教材として様々に利用できると考えられる。 さらに,九頭竜川でよく見られる礫種である閃緑岩について,上流域に分布する主要な深成岩体と河原の礫の全岩化学組成分析および偏光顕微鏡観察を行った。その結果,これらの閃緑岩礫は,上流に分布する深成岩体を起源とする可能性が高いことがわかった。給源の岩体を推定できたことにより,給源からの距離と礫の粒径や円磨度の変化に着目した流水の運搬堆積作用の学習にも具体的なイメージを持ちやすい教材として利用できると考えている。単なる礫の基礎データの提供だけでなく,それらを一歩更に進めた教育実践の提案にも役立つと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
福井県の地域地質データベースにぶら下げる形での石ころや砂のデータを準備中である。観察できる特徴や基礎データの他,その観察地点で利用できる初等・中等教育に合わせた資料やワークシート等も順次公開する予定である。 教育実践に関しては,コロナ禍の影響もあり,教育現場や科学イベント等で実践を行うことはできなかったが,コロナ禍の収束後に向けて,準備を進めている。 また,地域地質データベースを活用した地学教育手法の開発については,基礎データを更に充実させるべく,複数の地域において,礫種構成や,礫サイズ・円磨度の変化,礫の給源岩体の推定などを行ってきた。これらの基礎データは,礫の観察だけでなく,1つの河川において複数の地点のデータを比較して考えたり,児童や生徒が自ら調査活動等を行うことにより自分たちのデータを考察したりする実践にも活用できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに蓄積された石ころや砂の詳しい情報を福井県の地域地質データベースに連動させ,教育現場の教員が求める情報や活用しやすい資料,また,児童生徒が見ても興味が持てるような工夫を凝らして,地域地質データベースを充実させていきたいと考えている。準備のできた地点から順次web上にアップし,閲覧可能としていく予定である。 今後も,より多くの地域を対象として福井県内の他の河川についても観察に適した場所を探るための調査を続け,教材化に向けた基礎データをさらに蓄積させていく。 また,単に礫や砂を観察するだけでなく,現在堆積している礫や砂と地層との関係を結びつけて理解を深めるための教材化についても検討していきたい。例えば,今現在,河原などで観察できる礫のインブリケーションと水の流れる方向との関係を調べることにより,過去の水の流れ,すなわち礫岩層中の礫が堆積した時の水の流れを推定できる。野外における現在の石ころや過去の石ころ(礫岩層)の観察から,現在起こっている事象は過去を紐解くための貴重な証拠となりうると実感できる生きた教材として活用する方法等についても更に検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,コロナ禍による研究活動の制限等により,予定していた調査ができず,調査費用や消耗品の購入,実験に関わる消耗品等様々なところでずれが生じた。 これらによって差異が生じた金額については,本年度の調査費用および分析のための消耗品代等として使用する予定である。
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