研究課題/領域番号 |
20K03253
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山崎 敬人 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (40284145)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 理科教師 / 教師の専門性開発 / 児童生徒の多様性 / 多様な学び / 多様な学び方 |
研究実績の概要 |
本研究は,児童生徒の特性に応じた多様な理科の学びや学び方の実現と,その実現に貢献できる理科教師の専門性の開発と高度化を図るための方策について示唆を得ることを目指し,2023年度は主に以下の2点に焦点を当て,理科授業の実践経験を有する教師を対象として授業観察やインタビューによる調査を実施した。 ①理科授業において児童生徒の特性に応じた多様な学びの実現を阻んでいる要因について,主に理科という教科固有の問題点,理科教師が抱く教育観や子ども観,評価観などの観点から検討する。 ②上記の①で明らかにされた要因に起因する課題を解消し,児童生徒の特性に応じた多様な理科の学びを展開する上で,理科教師にはどのような専門性が求められるのかについて検討する。 分析の結果,次の3点が示唆された。 ・調査対象の教師のほとんどは,程度の違いはあるものの児童生徒の学びの多様性を認識しており,理科に関しては児童生徒の思考内容の多様性の観点から学びの多様性を捉えていた。また,学び方の多様性に対する関心の程度は学びの多様性より弱い傾向がうかがえた。 ・学力向上のための理科授業の構想・実践のあり方に関して,基礎的な知識・理解の定着を重視する考えと,児童生徒のニーズに応じた主体的・探究的な学びを重視する考えが認められたが,後者の考えをより重視する教師の方が,児童生徒の学びや学び方の多様性に対する必要感や寛容性が高く,児童生徒の特性に応じた多様な学びや学び方の実践をより積極的に志向している傾向があった。 ・多様な理科の学びや学び方に対する必要感や寛容性は,教師の教職経験(例えば,小学校と中学校の両方での教職経験,複式学級での授業経験,定時制高校での授業経験など)に基づく教師の授業観や学習観,子ども観,評価観と密接に関係している可能性があり,このような「観」の問い直しが専門性の開発に重要な意味を持つのではないかと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は当初は4年計画で構想していたが,研究計画の3年次までの間,新型コロナウィルス感染症拡大防止に係わって教育・研究活動等の実施に様々な制約が生じたことにより,学校現場における授業観察やインタビューなどのフィールド調査等を当初の計画通りに実施することが困難であったため。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症拡大防止に係る対応等のため十分実施することができていなかった,学校現場における授業観察やインタビューなどのフィールド調査を補充的に実施するとともに,その結果を分析・考察する。 具体的には,理科教師の授業実践を観察・記録するとともに,インタビュー調査を実施し,児童生徒の特性に応じた多様な学びや学び方の保障に関する実践事例と教師の考え(授業観や学習観,子ども観,評価観など)を分析・考察する。 その分析・考察を通して,児童生徒の特性に応じた多様な学びや学び方の実践を阻む要因を明らかにするとともに,その要因に起因する課題を解消し,児童生徒の特性に応じた多様な理科の学びを展開することができる教師の専門性の開発のための示唆を得る。 そして,研究期間全体を通した研究成果を総括し,今後の課題や展望をまとめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は,研究計画の3年次までの間,新型コロナウイルス感染症拡大予防に係る教育・研究活動の制約などのために理科教師の授業実践の観察・記録や聞き取り調査などを予定通りに行うことができず,それに伴って調査に関する諸経費が計画通りに執行できなかったことが主な理由である。 生じた助成金残額については,理科教師の授業実践の観察や聞き取り調査等を実施したり,調査により収集されたデータや資料などを分析したりする上で必要となる経費,及び研究期間全体を通した成果と課題の総括等の経費として適切に使用する。
|