研究課題/領域番号 |
20K03268
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
小林 真人 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (10261645)
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研究分担者 |
小林 弥生 聖霊女子短期大学, その他部局等, 講師(移行) (40837134)
山本 稔 弘前大学, 教育学部, 准教授 (40435475)
横山 洋之 秋田大学, 情報統括センター, 准教授 (80250900)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 数学活用 / ウェブ教材 / 複層的理解 / 大学基礎教育 / 接続教育 / 鍵概念 |
研究実績の概要 |
(組織の立ち上げ)教材開発,システム運用,利用・教育上の評価,教材調査の任務分担を行い,グループ活動と,9月より毎月,全体会議をオンラインで行った。 (教材デザインの検討)「微分の概念」の分野について,「学習者が観察を繰り返しながら,数学内外の事象と関連づけて複層的な理解を得る」ための鍵概念の抽出と配置を行い,「微分と変化の勢い」など11項目,「接線の傾きと変化の勢い」など5個の観察・体験素材を実装した。複層的な理解を実現するためのウェブサイトの構成を検討し,理解状況に応じた自由な参照(リンク),学習者による学習管理,拡張・展開性を考慮し,既存の学習管理システムを援用したシステムを構築することとした。 (調査)既存の国内外の数学ウェブ教材数件のタイプ(演習問題提供型,概念解説型など),対象(高校生,大学初年次生,社会人)と概略について調査を行い,本研究の目的とする,大学での理系基礎教育での利用を想定し,観察を繰り返しながら概念を理解するタイプの教材には,なお開発の意義があると判断した。2020年度に急遽開始された大学基礎教育の数学ウェブ授業について,従来の対面授業との比較調査を行い,高大接続教育についてのフォーラムで報告した。高等学校におけるICT教育の実情について,先進的な取り組みの例を詳細に紹介してもらう講演会を主催した。 (ウェブページでの試験公開) 2種類の教材デザインを「微分の概念」分野について試作し,サーバ上で試験公開した。 (効果の検証方法の検討)本プロジェクトで開発中の教材について,評価の実施対象,時期,方法,および,主目的に対する学習効果の評価方法,利便性についての評価方法について検討中である。特に,ウェブページ細部の仕上がりに左右されずに,概念理解の深さと定着度を適切に評価する方法について,工夫が必要と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症対策により研究環境が急激に変化し,研究体制の立ち上げが大幅に遅れた。また,研究交流も困難となり,予定していた対面作業や議論をオンラインで行わざるを得ず,共同作業時間が大幅に減少した。 国内外のウェブ教材について,外部からアクセスできる範囲での調査を終えたが,数学活用に対する姿勢や配慮,導入効果などについて,開発者と対面して考えを聞くことができなかった。また,ウェブ教材を導入することの影響について,大学で基礎教育に携わる教員の率直な意見を聞くことができなかった。これらは,第2年度以降に持ち越しとなる。 他方で,急遽開始された数学基礎教育のウェブ授業をもとに,ウェブ教材による理解醸成の状況や弱点,能動的な取り組みを実現する方策,学習者に見通しを与えることの重要性の再認識など,計画外の知見を多く得ることができ,教材作成に活用できた。 教材を提供するサーバを開設し,評価用の先行教材の製作を開始し,試行評価の実現の目処が立ったものの,教材の作成が一部に留まったため,本プロジェクトの進捗はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
学習者が観察を繰り返しながら複層的な理解を得るための鍵概念の抽出と配置を継続し,教材作成を継続する。 当初計画の通り,第2年度中に,教材の作成意図(体験を通して,将来の活用に資する理解を獲得する)に対する共感,教材を使用したことによる理解の深化と関心度の向上,達成感の評価を行う。ただし,感染症対策に起因する研究環境の急激な変化により,評価用試行版の完成は,2-3ヶ月程度の遅れ(8,9月)を見込んでいる。また,質問紙と聞き取り調査の設問について,検討を開始する。 当初の計画の通り,高等学校における本教材を用いた導入授業,高等学校教員との検討会の実施,オンライン教育の実績を有する国外研究者との教材の検討,数学基礎教育における利用についての国内大学,高等専門学校の数学科目授業担当者との意見交換を予定しているが,実施の可否と形態については,感染症の流行状況および,所属機関の研究交流指針に照らして,その都度検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究調査(学会参加)と研究討議のために初年度に計上していた旅費については,感染症の流行による開催の取りやめ,オンラインでの実施等の理由により使用しなかった。 対面して意見を出し,手を動かす利点はオンラインでは代用し難く,第2年度に,感染症の流行状況を見ながら執行する。
教材用のサーバ構築のための物品費は,現存の機器を活用して仮運用したために支出を延期した。今後,脆弱性や安定性を判断して執行する。なお,既存の機器で十分と判断した場合には,使用検証用に数種類の端末の購入に当てる。
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