研究課題/領域番号 |
20K03273
|
研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
原田 信一 京都教育大学, 教育学部, 教授 (90646647)
|
研究分担者 |
安東 茂樹 芦屋大学, 経営教育学部, 特任教授 (40273817)
岳野 公人 滋賀大学, 教育学部, 教授 (70313632)
湯地 敏史 宮崎大学, 教育学部, 教授 (80418988)
山田 哲也 湊川短期大学, その他部局等, 教授 (00727224)
荻窪 光慈 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (00431726)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 資質・能力 / 中学校技術科 / 課題発見・解決学習 / カリキュラム開発 |
研究実績の概要 |
本研究では,技術科教育における「資質・能力」育成のため,中学生と高校生に「学びの意義」を意識させることに着目して,課題発見・解決学習のカリキュラムを開発(授業モデル)し,その有効性を明らかにすることを目的とする。 中学校では,全国的に課題発見・解決学習を試行した授業実践が多く見られるようになっているが,その中には,題材(単元)の構成,授業展開が課題発見・解決学習的な配列であるだけで,教師主導の課題発見・解決学習も見受けられる。そのような学習では,生徒は既有知識や各学習で理解した内容を自ら関連付けて課題を発見したり,試行錯誤しながら課題を解決したりすることは難しく,資質・能力の育成にはつながらないと考えられる。その状況を踏まえ,題材を通して生徒に「学びの意義」を意識させることで,生徒自らが課題を発見し,試行錯誤しながら課題を解決していく授業実践を行い,その有効性を検証し,技術科教育における資質・能力の育成を目指した中学生,高校生の学習指導の在り方について明らかにすることは意義があると考える。 理論研究については,資質・能力の3つの柱として,①生きて働く「知識・技能」の習得,②未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成,③学びを人生に活かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養が求められている。そのため,資質・能力を育成するにあたってポイントとなる2つの概念である,カリキュラム・マネジメントと主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)について,探求学習に取り組んでいる先進校の取り組みや文献研究を行った。また,課題解決能力の育成カリキュラムを開発するための題材開発,授業実践を行い,開発研究に関しては,合同研究会において主体的・対話的な学習活動を取り入れた授業モデルを理論研究チームと研究実践チームで共有し,授業構成のあり方の検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度はほぼ当初の予定どおり,理論研究,開発研究を行うことができた。研究1年目として,緊急事態宣言で学校が休校期間には,技術科教育における「資質・能力」を整理した。学校が登校再開された後は,課題解決的なカリキュラム作成に関して,①ブリッジコンテスト,②タービンコンテスト,③計測・制御における自動運転システムコンテストを行った。これらのコンテストをとおして,技術科の主体的・対話的な学びや資質・能力を育む指導法やパフォーマンス評価とルーブリックの活用についての授業実践を行った。そして,学んだことを活かしてパフォーマンス課題に取り組む中で,生徒が構造やエネルギー変換,制御に対する考え方の変容が見られた。今後,単元計画,指導計画,学習指導案についてさらに検討していくとともに,パフォーマンス評価に関するパフォーマンス課題やルーブリック及びワークシートの検討,事前・事後のアンケートの分析を継続的に行っていく。そして,どの学校でも実施可能な簡易なパフォーマンス評価の作成をめざす予定である。また,木材加工法・実習におけるポートフォーリオ評価法の活用や生物育成の栽培に関する学習で生徒の理解を深めるICT教材の制作,及び小学校におけるプログラミング教育に関する教材の制作などを行った。さらに,学校教員及び教員養成課程の学生を対象とするワークショップを開催予定であったが,新型コロナウィルス感染予防のため,講演会のみ開催した。講演会は「これからの時代に求められる資質・能力を育む問題解決学習と評価の在り方」という演題で感染予防など工夫して行った。参加者は大学院生,学部生,大学教員,京都府・京都市の中学校教員,附属中学校教員などに加えて,京都教育大学産業技術科学科を目指している高校生の参加もあった。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3(2021)年度は開発研究として,理論研究の成果をもとに,附属学校及び公立学校の技術科担当教員の協力を得て,技術科教育における「資質・能力」を育成するカリキュラム開発(授業モデル・教材開発),附属学校教員等の協力を得て授業実践・評価を行う予定である。 令和4(2022)年度は実践研究として,開発したカリキュラム(授業モデル・教材開発)を,パイロット校の教員等の協力を得て授業実践・評価・改善する予定である。 令和5(2023)年度は評価研究として,パイロット校での授業実践を評価・改選した授業モデルを,公立学校の教員等の協力を得て授業実践。試行結果から研究者・学校教員で教材,カリキュラムを評価し,さらに改善する予定である。 課題解決的なカリキュラムの作成については,①ブリッジコンテスト,②タービンコンテスト,③計測・制御における自動運転システムコンテストを中心に行っているが,さらに技術科の内容の幅を広げていき,多様な授業実践を行う予定である。また今後,単元計画,指導計画,学習指導案について検討していくとともに,パフォーマンス評価に関するパフォーマンス課題やルーブリック及びワークシートの検討,事前・事後のアンケートの分析を行い,授業改善をしていく予定である。今後も,学校教員及び教員養成課程の学生を対象とするワークショップ及び講演会を開催する。また,研究は当初計画どおりに進まない事態に備えて,2年目:開発・実践,3年目:実践・評価,4年目:評価・改善と,重心をずらしながら段階を重ね合わせる形で進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度,新型コロナウィルス感染症の影響で緊急事態宣言が発出され,5月末まで学校が休校になり,年度を通して出張が制限されたり,通常授業が行えなかったりした地域もあった。技術科教育における「資質・能力」について,理論研究としての文献研究等は計画どおり行うことができたが,国際会議や国内学会等への出張,講師を招聘しての研修会等が実施できなかったため,次年度使用額が生じた。
|