研究実績の概要 |
本研究は、国立天文台4D2Uプロジェクトで開発されてきている宇宙ビュアーMitakaに代表される新しいソフトウェア、及び学校現場で整備されつつあるICT機器(例えばタブレット)等のハードウェアを用いて、小学校・中学校で天文学習をより効果的に行えるよう学習内容の構成を含めた天文教育手法を開発すること、及びこれらの機器を有効に利用して、学習の深化をはかることを目的としている。2020年度は以下のことを行った。 (1) Mitakaを使った研究授業の解析:香川県内2中学校の3年理科授業(2018年及び2019年実施)で、シミュレーションシステムMitakaを用いた銀河系学習でのアンケート結果を解析した(松村と中, 2020; Matsumura, Mori,& Washibe, 2021)。これらの解析では、Mitakaを用いることで,子どもたちの宇宙への興味は増すことを示した。アンケートの記述に、季節による天の川の見え方の違いは,銀河系中心と地球との距離によるという勘違いが見られた。この勘違いは、今までには知られていない。このような勘違いを克服する方法を開発することが、今後の銀河系学習についての一つ目標となりうることを示した(松村と中, 2020)。 (2) Mitaka を用いた天文学習の深化:Mitaka の最新バージョン(1.6.0b)では、恒星のデータに Gaia DR2 が使われているため、天の川の描写が格段に精細になり、容易に天の川の中に暗黒星雲を確認できるようになった。これは、恒星のみならず、ガスと塵も宇宙に存在することが学習でき、星形成や太陽系の誕生についても学べることを示唆する。この内容を中学校理科の授業でどのように展開するかは検討中である。関連して、宇宙の塵からの熱放射と磁場についての研究を行った(Matsumura,et al. 2021)。
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