研究課題/領域番号 |
20K03276
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
松村 雅文 香川大学, 教育学部, 教授 (50239084)
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研究分担者 |
加藤 恒彦 立教大学, 人工知能科学研究科, 特任教授 (90413955)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 天文教育 / 理科教育 / 宇宙ビュアーMitaka / 銀河系学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、国立天文台4D2Uプロジェクトで開発されてきた宇宙ビュアーMitakaに代表される新しいソフトウェア、及び学校現場で整備されつつあるICT機器(例えばタブレット)等のハードウェアを用いて、小学校・中学校で天文学習をより効果的に行えるよう学習内容の構成を含めた天文教育手法を開発すること、及びこれらの機器を有効に利用して、学習の深化をはかることを目的としている。2022年度は以下のことを行った。 (1) Mitakaスクリプトの効率的な使用方法:Mitakaのコマンド実行機能(ver.1.6から利用可能)を用いると、予めスクリプトを作成することでカスタマイズされた動作を行うことが可能であり、教育現場でのMitakaの応用の可能性は、従来よりも遥かに広がった。これについての研究を引き続き行った。日本地学教育学会から招待され、2022年6月22日に同会によるイベント「お試し!キニナルあの「教材」:Mitaka編」(オンライン)で成果の一部等を紹介することができた。 (2) Mitaka を用いた天文学習の深化:最新のMitaka(ver.1.6.0b以降)では、恒星データに Gaia DR2 が使われているため、天の川の描写が格段に精細になり、容易に天の川の中に暗黒星雲を確認できるようになった。これは、恒星のみならず、ガスと塵も宇宙に存在することが学習でき、星形成や太陽系の誕生についても学べることを示唆する。そこで、Mitakaの天の川のイメージの暗い部分がどの程度、実際の暗黒星雲を表しているかを検証するため、Planck衛星によるダストによる減光量のマップとの比較を行った(松村、2022)。この結果、Mitakaの天の川は、銀河面から銀緯±20度程度の領域では、減光量Avで5等以上の暗黒星雲を良く表していることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) Mitakaやその他のICT機器等を用いた新たな研究授業を行うことを模索したが、2022年度もコロナ禍が継続しており、想定した活動は実施できなかった。このため”やや遅れている”と判断した。 (2) Mitaka を用いた天文学習の深化に関して、中学校理科の授業でどのように展開するかについて引き続き検討中である。この内容に関連して、宇宙の塵からの熱放射と磁場についての研究を行い、星間雲(フィラメント)と星間磁場や星形成との関連の研究を行った(Hwang et al. 2022)。
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今後の研究の推進方策 |
(1) MitakaやICT機器等を用いた天文学習:銀河系の学習以外にも、MitakaやICT機器等を効果的に用いた天文学習について研究する。コロナ禍の終了が近いので、可能ならば、小学校または中学校で、Mitaka等を用いた研究授業を行い、Mitaka等を用いる効果を検証する。研究授業が難しい場合、Mitakaのスクリプト使用や、色々なICT機器等の併用による天文学習について、より深く可能性を追求する。 (2) Mitakaを用いた天文学習の深化:Mitakaの現行バージョンで確認することが判った暗黒星雲を、内容的に理科の他の単元と関連付けるのかを考察する。この内容に関連して、高質量星形成領域の一つである、いっかくじゅう座R2分子雲の研究を進める。 (3) Mitakaに関する書籍の刊行:コロナ禍で研究の研究の進展は制限されてきたが、Mitakaに関する知見は蓄積されてきたので、書籍の刊行を想定している。このための研究を進展させ原稿や図等を準備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度もコロナ禍が継続したため、想定していた小学校または中学校での研究授業ができず、当初の予定よりも使用額が少なくなった。次年度は、研究授業を想定し、そのための機器の整備に助成金を用いる。また、想定している研究成果の出版と、その準備のために、助成金を用いる。
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