研究課題/領域番号 |
20K03281
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
椎橋 元貴 (椎橋げんき) 白百合女子大学, 人間総合学部, 准教授 (10788938)
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研究分担者 |
大貫 麻美 白百合女子大学, 人間総合学部, 准教授 (40531166)
石沢 順子 白百合女子大学, 人間総合学部, 准教授 (40310445)
高橋 貴志 白百合女子大学, 人間総合学部, 教授 (10259187)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | プログラミング的思考の萌芽 / 論理的思考 / クラフト紙 / 発達段階 / 乳児 / 6つの分類規準 / 遊び |
研究実績の概要 |
本研究は、乳幼児がクラフト紙を用いて遊ぶ際に見られるプログラミング的思考の萌芽とその発達段階を明らかにすることを目的として、5年間の追跡調査を行う2年目の研究となる。 まず、初年度において0歳児クラス(0歳10か月)の乳児に論理的思考の特徴として示されている「幼児の論理的思考の分類規準」の6つの視点のうち、既に2つの思考の萌芽が確認できた記録映像の分析を進めたところ、新たに3つの規準に関する思考の萌芽が確認できた(白百合女子大学初等教育学科紀要に論文として掲載)。 次に1歳児クラスに見られるプログラミング的思考の萌芽について、検証した。その結果、2歳10か月の乳児からは0歳児クラス(0歳10か月)では見られなかった「全体と部分」 を含む6つの視点すべてを確認することができた(日本科学教育学会にて発表)。さらに、6視点のうち、「時系列因果・因果関係(可逆的因果)」の萌芽には、「仮説・確認」などの視点が関与していることが示唆された。このことから「幼児期の論理的思考の分類規準」の6つの分類規準が相互に影響を与えうることがわかった。これらの関係性などについてさらに分析を進める。また、プログラミング的思考の萌芽として「遊びに内在する要素を確かめる行動」があることを示したが、0歳10カ月の乳児においても同様の行動が見られ、再現性が確認された。さらに2歳10か月の乳児からは「遊びに内在する要素を確かめる行動」と6視点の往還も確認できた。これは「遊びに内在する要素を確かめる行動」と6視点が相互に関わり往還しながら深まっていく可能性を示唆しているといえる。 6視点に関する思考の萌芽のそれぞれの関与について、調査済の他の1歳児の事例及び12月末に行った2歳児の事例についても現在分析を進めており、既出の報告事例と比較・検討し、2022年度の学会における口頭発表等で公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査対象園では新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から保育の縮小や調査対象園への出入りの規制があった。そのため、研究者による調査対象園への直接訪問や聞き取り調査について延期や中止の処置を行った。調査は乳幼児がクラフト紙で遊ぶ過程を対象とするものであるため実践に際しても新型コロナウイルス感染症蔓延の情勢を慎重に判断する必要があり、一部調査の中断や延期を余儀なくされた。調査時期は計画より遅延したが、2021年度内に再開しており、残る調査内容については2022年度に実施することを計画している。 調査が行えなかった期間、0歳児クラスと1歳児クラスの分析を進め、本研究の分析の観点として「幼児期の論理的思考の分類規準」の6つの分類規準が相互に影響することに着目し、整理したプログラミング的思考の要素や得られた知見を日本保育学会等で発表した。 なお、調査開始時期が遅くなったために分析が終了していない他の1歳児の事例及び2021年12月に調査を行った2歳児の事例がある。これらについて今後分析を進め、2022年度内に成果発表を行うことを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
現在も新型コロナウイルス感染症蔓延の影響が続く中で、その対応に追われる調査対象園の負担を考慮し、研究者による調査対象園への直接訪問や聞き取り調査の回数は2021年度の予定と同様に3か月に1回程度とする。クラフト紙を用いた活動を行う際の映像記録は継続して依頼する。保育室内の密を避けるためにクラス等の編成が変更された場合には、それに即して調査対象者数の減少が見込まれる。 また、2024年度調査の実施可能性を確認するために行う予定であった4歳児対象の予備調査を2021年度内に実施できなかったため、2022年度に実施することとする。 本研究の成果は全国大会の学会で発表するとともに、白百合女子大学紀要等にまとめて報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
企画当初は国内外での学会参加や旅費を予算に組み込んでいたが、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により海外渡航が中止となり、予定していた海外の知見に関する調査や国際学会での発表がまだ十分にできていない。また、国内での対面実施を予定していた研究活動について調整が必要となり、実践の実施においても調査の遅れが生じており、次年度以降に実施するため繰越が生じた。
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