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2022 年度 実施状況報告書

数学リテラシーに基づく理系学部における数学教員養成の理論研究と教授法開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K03283
研究機関椙山女学園大学

研究代表者

浪川 幸彦  椙山女学園大学, 教育学部, 客員教授 (20022676)

研究分担者 白井 朗  椙山女学園大学, 教育学部, 教授 (70454345) [辞退]
塩澤 友樹  椙山女学園大学, 教育学部, 講師 (50813812)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード数学リテラシー / 数学教員養成教育 / 数学的な見方考え方 / 教科内容学 / 教育の現代化 / Bruner / 教育数学
研究実績の概要

本研究は,数学の教科内容を,数学リテラシー概念を基礎に「今世紀すべての人が持つべき(体系的な)知識」として明確化し,学校数学教育カリキュラムを理論的に基礎付けること,および「数学教員の持つべき数学リテラシー」を具体化して数学教員養成課程における教授法を研究することを目的としている。
そのため申請計画に従って3方面で研究を進め,第3年度は次の成果を得た。
1.数学リテラシー概念の再構築とリテラシー概念の教科を越えた一般化(以上計画):本年度も新型コロナ感染症のため,研究集会は殆ど遠隔開催となり,文献研究が主となった。本年度には数学および数学教育について歴史的視点から書かれた重要な文献が幾つか出版され,それらの研究を中心に,関連文献の研究を深めた。リテラシー概念の一般化については教科内容学会での新プロジェクト発足を受け,リベラルアーツ教育についての研究を始めた。前年度からの「教育の現代化」の21世紀版として,Jerome Brunerを学び,2.の研究に結び付ける指針を得た。
2.今世紀日本人の持つべき数学リテラシーを具体化する研究を,「科学技術の智」プロジェクト報告書の改訂および「数学的な見方考え方」の明確化として行う(以上計画):これも前年度同様文献研究および川添充氏の科研費研究(高水準リテラシー)への研究協力の形で行った。特に「科学技術の智」に続く「教育数学」の諸研究を振り返り,「言語としての数学」の観点から中間的な総括を行った。
3.中高数学教員の持つべき数学リテラシーの具体化と教科教育法の教材開発としてその教授法を実践的に研究(以上計画):名古屋大学で「数学科教育法Ⅰ」「同III」として当該内容についての授業を引き続き担当し,実践研究を実施し,一部を公刊した。またFacebook等を通じた意見交流も引き続き行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナ感染症による研究活動の停滞から,本計画を次年度まで延長することが認められた。進捗状況の報告はこれを前提とする。
1.研究代表者による前回課題計画「リテラシー概念の教科を超える一般化」を,STEAM教育と関連付けて具体化する新プロジェクトに参加し,リベラルアーツ教育と関連付けての研究として進めた。一方で重要な文献の公刊があって,それらについて現在研究途上にある。Brunerについては,その基本的著作の研究と,研究代表者自身の研究活動との接続がほぼ明らかになったことから,それを踏まえた数学教科における具体化を次項の研究の指針として進めつつある。
2.3.数学教育に関する文献研究においては,数学史および日本の数学教育史の浩瀚な研究が公にされ,その研究から得られた日本の教育の中での本課題の位置付けに基づく実践研究を推し進めて,部分的に公開した。
一方昨年一昨年同様名古屋大学における「数学科教育法I」の授業を再び実践し,その中で「科学技術の智」報告書の内容を深く振り返っている。また授業実践そのものが「数学教員の持つべき数学リテラシー」を考えることになっている。加えて「科学技術の智」プロジェクトに続く,「教育数学」プロジェクトの成果を振り返り,「言語」の観点から新たな研究を進めつつある。また先行年度に続き,Facebook等において大学入試問題を含む様々の問題解決,あるいはAIとの関連について議論し,その記録を資料として積み重ねている。
以上から,論考としては中間発表的なものを公にした段階であるが,研究としてはその方向性がさらに明確なものとなったとの意味で,ほぼ順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

1.数学リテラシー概念の再構築と一般化:Bruner 研究を踏まえ,70年代日本の「数学教育現代化」の批判的検討をさらに進める。一方で新しい流れについては,教科内容学会内に立ち上げられたSTEAM教育を中心とする新たな研究プロジェクトで,小職はむしろ古典的なリベラルアーツからの歴史的流れを重視し,日本の大学教育を視野に入れた考察を進める。また新しい「学習理論」の流れが,日本における数学教育理論の見直しを迫っていることから,その研究をも進める。
2.日本人の持つべき数学リテラシーの具体化:上記「現代化」の批判的検討を踏まえた数学教育カリキュラムの基礎付けの素案を提示する。これは「科学技術の智」報告書の改訂としての「教育数学」の提示である。特に日本における上記「現代化」の批判的検討および遠山啓等の同時代の著作の検討を踏まえる。一方数学史的研究の与える数学教育カリキュラムへの示唆についての思索を深め,公にする。
3.中高数学教員の持つべき数学リテラシーの具体化とその教授法の開発:引き続き名古屋大学での「数学科教育法」の講義を担当し,これに改善を加える。またこれを教科書,あるいは一般向け著作として公にすることを目指す。
4.今までの研究成果を Webにおいて公開し,さらなる研究の進展に資する。国際研究集会においても公開することを試みる。

次年度使用額が生じた理由

先行年度に引き続き,COVID-19感染症蔓延のため,出席予定の国際・国内研究集会がほとんど延期,リモート開催となって使用予定の旅費を殆ど使用できなかった。そこで一部は資料購入費用に充当したが,残金は次年度の研究会参加,および発表用機材の充実等に充てる。さらに研究成果公開のための経費としても使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 数学との戯れー初等数学から見た数学教育ー2022

    • 著者名/発表者名
      浪川幸彦
    • 雑誌名

      数学文化

      巻: 38 ページ: 77-86

  • [学会発表] 普遍記述言語としての数学と学校教育言語としての日本語2023

    • 著者名/発表者名
      浪川幸彦
    • 学会等名
      教育数学の一側面 高等教育における数学の多様性と普遍性
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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