本研究の結果から,対人葛藤の持続可能性を高める要因が明らかになった。具体的には,1)個人特性としての共感的関心が低い,2)個人特性としての被害的認知が強い,3)自己の被害に注目して葛藤を捉える,またその状態で他者の心理的苦痛について想像をめぐらせることが挙げられる。逆に,対人葛藤が持続する危険性を抑制する方法として,共感の認知的側面である視点取得が有効である可能性が示唆された。ただし,先行研究では敵対的な関係にある他者に対して視点取得を行う場合,より敵対的な行動が促進されることが指摘されているため,視点取得の効果については今後の検討が必要である。
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