研究課題/領域番号 |
20K03294
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池田 浩 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (80454700)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シニア / ワークモチベーション / インクルーシブ・リーダーシップ / 真正性 / 包摂性 |
研究実績の概要 |
本研究では、シニアのモチベーションの個人差を説明する概念として、加齢ではなく、新たに「心理的障壁」たる概念を提唱する。そのために、①心理的障壁の概念と測定尺度の確立、②心理的障壁の発生機序の解明、③組織現場においてシニアの心理的障壁を克服するためのリーダーシップの検討に注力することで、実践的な示唆を提供することを目指していく。 2021年度は、シニアのモチベーションの心理的障壁を克服するためのリーダーシップとして、インクルーシブ・リーダーシップに着目して、その概念の可能性と機能について検討した。まずインクルーシブ・リーダーシップの概念については、既存の研究(e.g., Carmeli, Reiter-Palmon & Ziv, 2010)を拠り所に、それに含まれる3つの因子(①開放性、②利用可能性、③接近可能性)を検討した。それを踏まえて、本研究では、インクルーシブ・リーダーシップの意義をさらに拡張するために、先の3つの因子に加え、④所属感と⑤独自性の因子を加えることを提案して、尺度を再構成した。社会人1000名を対象とした調査を行ったところ、インクルーシブ・リーダーシップは、多様性のある集団においても、メンバーの包摂性(インクルーシブネス)を促し、同時に、各メンバーの個性を引き出す「真正性」も引き出していた。そしてそれらが職場集団におけるイノベーションを促進する効果を持っていた。 こうして、インクルーシブ・リーダーシップは、シニアの心理的障壁を解消して、職場集団の一員としての包摂性を醸成すると同時に、シニアの経験や能力を引き出す(真正性)可能性をもつ知見を得ることができた。これらの研究成果は、既に論文として投稿済みであり、2022年度の発表を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度も、コロナ禍による移動の制限等も影響して、研究活動に支障が生じている。それを補うべく、文献研究や調査会社等を活用したインターネット調査を利用しながら、本研究プロジェクトについて実施可能な内容から取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、前年度に進行が滞っていた「心理的障壁」尺度の開発と精緻化に取り組む。幅広い業種(メーカーや金融など複数の業種から3-4社を選定)に勤務するシニア世代2000名ほどを対象に調査を実施する予定であるが、コロナ禍が続き、その実施が難しければ調査会社によるオンライン調査なども視野に入れて研究を進めていく。 また、2021年度に、シニアの心理的障壁を克服して、モチベーションを促すリーダーシップについて検討を行ったが、2022年度は、その検証をさらに幅広い企業組織を対象に実施していく。それを踏まえながら、シニアのモチベーションを引き出し、さらに能力を発揮するためのマネジメントのあり方について理論的かつ実践的な示唆を得ていく。同時に、シニアがいきいきと働くための人事制度のあり方も検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も、一昨年(2020年度)に続いて、コロナ禍により企業現場の観察やヒヤリング、調査などの活動が十分に叶わなかった。また国内外の学会等も全てオンラインで開催されたため予定していた出張旅費を執行することができなかった。加えて、2022年度に、本研究の成果を発表すべく国際学会にエントリーし、採択の通知を受けていたが、2022年3月時点で、海外出張の見通しが十分つかなかったことから、国際学会の参加を見送った。 そのため、2022年度は、国内学会での発表を中心に行いつつ、かつウィズコロナで活動制限も緩和されつつあるため、企業組織への訪問や調査を加速して行っていく。それが叶わない場合には、調査会社を通じたオンライン調査も視野に入れて予算を有効に活用していくことを検討する。
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