本研究では、シニアのワークモチベーションに着目し,そのモチベーションの個人差を説明する概念として,単に「加齢(aging)」ではなく、新たに「心理的障壁」たる概念二着目視,その発生機序と克服マネジメントを明らかにすることであった。これを遂行するため,本研究では主に3つのことについて取り組んだ。 第1は,心理的障壁の概念と測定尺度の確立することであった。これについて,高齢者心理学における社会情動的選択性理論などを参考にしながら,本研究では“十分な能力を保有しているにもかかわらず,困難あるいは新規な課題を取り組むことに苦手意識を持つこと”と定義した。そして,それに基づいて4項目からなる測定尺度を考案した。 第2は,心理的障壁の発生機序を解明することであった。この心理的障壁は,若年層から中年期,そしてシニア期になるにつれて高まるものではある。しかし,シニア層になるほど個人差が大きく単に「加齢(aging)」要因だけでは説明できない。本研究では実年齢に比して自分がどの程度若いと感じているかに関する「主観的高齢観」の関連性を示唆する知見を得ることができた。 第3は,組織現場においてシニアの心理的障壁を克服するためのリーダーシップを検討することであった。シニアに対して指示的な行動ではなく,シニアの経験と主体性を十分に活かすリーダーシップとして従来のサーバント・リーダーシップに加え,セキュアベース・リーダーシップの有効性を示唆する知見を得た。 これらの研究成果は,2023年度にThe8th IPPA World Congress on Positive Psychologyをはじめとする学会で発表を行った。さらに,その成果をまとめ各種学術ジャーナルに投稿予定である。
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