研究課題/領域番号 |
20K03301
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
芳賀 繁 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (10281544)
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研究分担者 |
重森 雅嘉 静岡英和学院大学短期大学部, その他部局等, 教授 (00426149)
吉川 肇子 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (70214830)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レジリエンス / 制御焦点理論 / オンライン実験 / ゲーミング / グループワーク / 安全教育 |
研究実績の概要 |
制御焦点とレジリエントな行動の関係について,ネガティブな結果の回避を目指す「防止焦点」と,ポジティブな結果の実現を目指す「促進焦点」が課題解決に及ぼす影響を比較するオンライン実験を開発し,実施した。作成した課題は,ルーチンスの水瓶問題と類似のものであり,同じ解答が続く複数のパズル問題を解答させた後のターゲット問題の解答時間や正答率を,防止焦点条件と促進焦点条件の参加者間で比較するものであった。防止焦点条件の参加者には速く間違いが少なく解くことを,促進焦点条件の参加者にはよりよい解答を探索しながら解くことを求めた。 その結果,前例や決められた手順に従うだけでは解決困難な状況においては,促進焦点の方が防止焦点よりも正答率が高く,回答時間が短いことが明らかになった。この結果は,マニュアルを教えて手順通りに行うことを教育するだけよりも,現場第一線が日頃から自律的に考えて作業することが,さまざまな変動や外乱にレジリエントに対処するポテンシャルを高めるのに役立つことを示唆するものである。 さらに,産業界・医療界等で実施可能な安全研修ゲームの開発に向けては,Covid-19の感染状況に鑑み,鉄道会社ではオンライン,建設会社ではハイブリッドで研修を行った。また,化学工業会社の製造工場では,作業手順の揺らぎに着目させるグループワークを実施した。 これらの活動を通して,本研究課題で開発するゲームの要件や実施上のノウハウが蓄積された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書では2020年度に促進焦点と予防焦点の制御を比較し,前者が後者よりもレジリエントな安全行動を促進することを検証し,2021年度にレジリエントな安全行動を促進するゲームを開発する予定であったが,Covid-19の蔓延による行動制限のため研究の進捗が遅れている。 2021年度は前年度に予定していた実験をオンラインで実施をする計画に変更した。実験プログラムの開発に時間がかかったため,2021年度は実験の実施と結果の分析をするだけに留まり, 2021年度に行う予定だったゲームの開発は先送りされた。しかし,レジリエンス能力を高める目的の研修を鉄道会社や建設会社で実施し,開発するゲームの要件や実施上のノウハウが蓄積されたので,2022年度にはゲームの開発および効果の検証に進む見通しが付いた。
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今後の研究の推進方策 |
レジリエントな安全行動を促進する研修プログラムを開発して試行する。このプログラムにはゲーム,グループワーク,レジリエントな対処に関する教育を含む予定である。さらに,研修プログラムの効果を確認するための実験または調査を実施して,効果を定量的に検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックが収まらず,参加者を集めて実験や研修を行うことができなかったため謝金等の支給がなかった。国内,国際会議もオンラインで実施されたので打合せ会議を含め,旅費交通費の執行が行われなかった。研究期間を2023年度まで延長し,2022年度と2023年の2年間で研究活動を活発にし,必要な予算執行を行う予定である。主な使途としては,開発するゲームの小道具作成委託,オンライン実験プログラムの開発委託,実験参加者への謝金,国内外で開かれる学会およびゲーム見本市において研究成果を発表するための参加費と旅費である。
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