研究課題/領域番号 |
20K03302
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
上瀬 由美子 立正大学, 心理学部, 教授 (20256473)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ステレオタイプ / 偏見 / 刑務所 / 出所者 / 拡張接触 / 社会的・制度的支持 |
研究実績の概要 |
本研究では、ステレオタイプ・偏見低減研究において効果的接触の成立条件とされる「社会的・制度的支持」の一形態として「可視化した社会システム」を位置づけ、現実の社会政策におけるその有効性を「拡張接触」の促進に焦点を当てて検証することを目的としている。この際、可視化した社会システムを政策として導入した事例に注目し、被スティグマ化された集団に対する人々のステレオタイプ・偏見が、どのようなプロセスを経て変容したかを、地域成員間の接触の拡張プロセスに焦点をあてて分析することを計画した。 研究目的に沿い2020年度は刑務所の可視化の一側面として刑務所と地域の連携に焦点をあて、受刑者の社会復帰のプロセスがどのような形で市民に可視化されているのかについて日本および諸外国の現状を比較する事例・研究の収集を行った。その結果、地域連携が進む諸外国にあってもこの可視化が住民の刑務所・出所者に対する態度にどのようなプロセスを経て変化を生じさせるのかについてはさらに詳細な検討が必要であることが確認された。 申請書提出時には、2020年度は第1研究として「島根あさひ社会復帰促進センター」近隣住民の代表として地域の民生委員や刑務所ボランティアへ面接調査を実施し、現在の地域の様子を現状把握するとともに拡張接触のプロセスに関する仮説モデルの検証を行う予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大のため、地域訪問による現状把握ができず、住民への面接も困難な状況であった。このため面接調査については、調査項目と調査計画について関係地域に調査を依頼し、次年度以降の協力を求め了解を得るにとどめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請書提出時には、初年度は「島根あさひ社会復帰促進センター」開設地域を訪問し、地域の民生委員や刑務所ボランティアへ面接調査を実施することで、矯正システムの可視化の現状と、拡張接触のプロセスを詳細に把握する予定であった。しかし2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大状況が続き、現地視察と面接調査が実施できなかった。このため本年度は文献調査が中心となり、研究1については、調査項目と調査計画について関係地域に調査を依頼し、次年度以降の協力を求めるにとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
当初、初年度実施が計画されていた日本の刑務所近隣住民への面接調査については、2021年度に実施する形へと予定を変更する。 また申請時には2021年度に、刑務所と地域の連携が進むカナダを訪問して刑務所と地域の連携について地域住民に聞き取り調査を行う計画であった。しかし新型コロナウイルス感染症の状況により海外渡航が困難となり、この状況は2021年度以降も継続することが予測される。渡航の難しさだけでなく矯正施設への現地訪問や住民面談が従来のように行えなくなったため、研究計画通りの調査実施が難しくなった。また2021年度以降にカナダで実施予定であった量的な住民調査についても、事前の現地視察や住民面接抜きでは適切な調査項目を作成することが困難である。このため予定されていたカナダでの面接調査および量的調査(住民調査)の実施については、代わりに、日本の官民協働刑務所近隣住民へ広く量的な調査を行う形へ計画を変更する。具体的には山口県および島根県の刑務所近隣住民に質問紙調査(個別配布・郵送回収)を実施し、刑務所開設後の施設接触状況と刑務所・出所者への態度を尋ねる。本研究の目的は、「可視化した社会システム」の有効性を「拡張接触」の促進に焦点を当てて検証することであるため、日本の刑務所近隣住民を対象とした調査によっても検討は可能と考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、初年度に予定されていた調査地域訪問と面接調査が実施できず翌年実施に変更となったため。
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