研究課題/領域番号 |
20K03302
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
上瀬 由美子 立正大学, 心理学部, 教授 (20256473)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 偏見 / ステレオタイプ / 接触 / 刑務所 |
研究実績の概要 |
本研究では、ステレオタイプ・偏見低減研究において効果的接触の成立条件とされる「社会的・制度的支持」の一形態として「可視化した社会システム」を位置づけ、現実の社会政策におけるその有効性を「拡張接触」の促進に焦点を当てて検証することを目的としている。2021年度は刑務所と地域の連携に焦点をあて、受刑者の社会復帰のプロセスがどのような形で市民に可視化され、どのようなプロセスを経て刑務所や受刑者に対する態度を変容させるかを分析した。事例として取り上げたのは、山口県および島根県に開設されている官民協働刑務所である。刑務所近隣住民に対し、2021年7月から8月に面接調査(研究1)を、2021年10月から12月に住民調査(研究2)を行った。 研究1では、センターとの関わりをもつ活動・仕事をしている住民10名と、当該の活動をしていない2名の計12名を協力者として、オンライン(ビデオ通話)形式を用い半構造化面接を行った。面接内容は、センターと地域をつなぐ行動、民間職員との接触、ボランティアとの接触の3点から大きくまとめられ、センターと地域をつなぐ「地域代表者」の存在とその構成、彼らが地域に影響を及ぼす際の主要な道筋、そして矯正施設という性質に依る拡張接触促進の困難さが明らかとなった。 研究2では、当該地域の住民に広く住民調査を実施し、センターに対する態度や接触について尋ねた。センターに対する接触の形および情報共有のプロセスに関する質問項目は、研究1で得られた知見をふまえて作成した。美祢市においては豊田前地区住民の285世帯に世帯主用および配偶者用の調査票を配布をし、計206票を回収した。浜田市においては旭町とそれに隣接する金城町の2564世帯に、美祢市同様の形で配布を行い、計1976票を回収した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書提出時には、日本の官民協働刑務所の事例と、刑務所可視化が進むカナダの連邦刑務所運営への地域ボランティア参加の事例を取り上げ、アクション・リサーチを行うことを計画していた。2021年度も新型コロナウイルス感染症拡大状況が続き、海外の視察と面接調査の実施が困難であった。このため、2020年度に予定変更した通り、本研究については、日本の官民協働刑務所の開設事例に焦点を当て、近隣住民に広く量的な調査を行う形で研究を行った。2021年度は2つの刑務所近隣地域で住民への面接調査と、広範囲な住民調査を実施することができた。この目的に沿った形で、面接調査を実施し、またその結果に基づいて広範囲な住民調査が実施され、現在、検討のための基本的データの収集が完了している。この点から、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は前年度に収集した住民調査について結果をとりまとめ、本研究課題報告書を作成する。また住民調査の結果を、同地で過去に行われた結果と比較する分析を行った上で、学会誌投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
住民および関係者への結果報告も兼ねて、前年度に収集した住民調査について結果をとりまとめ、本研究課題の報告書を作成することを計画している。このための報告書作成および郵送費として使用する。
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