本研究課題において目指したものは、心理学、社会学研究において得られる、カテゴリカルデータの新たな分析方法の開発であった。その大きな柱となったものは、多重対応分析と、その主成分分析的使用を可能にするための、直交多項式によるカテゴリーのコーディングと重み行列の左右からの回転方法が主たるものであり、その多くの部分は前年度までに学術論文、学会発表として公表してきた。今年度においては、特に重み行列の直交回転にもとづく斜交回転の方法である independent cluster rotation についての新たな事実、すなわち、この回転方法によれば、因子負荷行列(斜交回転におけるパターン行列)の主成分ごと(因子ごと)の平方和が、データの全分散のうち各因子によって説明できる大きさと解釈できることの証明と、実データの分析における他の斜交回転の方法との比較検討であった。これは、日本行動計量学会第51回大会において発表し、同大会の発表論文抄録集に掲載した。 次に、model based なカテゴリカルデータの分析方法である潜在構造分析への関心から、これを含む多くのモデルをカバーする mixture modeling について検討した。これについては、未公刊の解説書(共著)の1章(または2章)となる予定であるが、現時点で出版の目途が立っていない。これについては、解に影響する大きな bias の存在など、多くの問題点をシミュレーションと実データの分析を通じて発見したが、これらについては、日本心理学会第87回大会の自主シンポジウムにおいて発表した。 年度の後半では principal cluster component analysis の研究を再開し、内的整合性の高い尺度構成法の研究とあわせて英文論文を執筆し、学術誌に投稿したが、現時点で査読結果は判明していない。
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