研究課題/領域番号 |
20K03309
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
黒川 光流 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (40325543)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リーダー-フォロワー間葛藤 / 葛藤管理方略 / リーダーシップ行動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,組織において生起するリーダーとフォロワーとの間の葛藤に対するリーダーの管理方略を規定する要因,およびリーダーの葛藤管理方略と組織全体の成果との関連を明らかにすることである。本年度は,リーダーの葛藤管理方略について理論的に整理した上で,組織内コミュニケーションとの関連の検証,および組織の状況的要因との関連の検証を行った。 リーダーの葛藤管理方略は,フォロワーとの間に葛藤が生起した際に一時的にとられる行動として捉えられることが多く,そのため葛藤時に喚起された解決目標や葛藤当事者の情動状態など,葛藤生起時の状況要因が多く検討されてきた。しかし,組織が課題を遂行する上で,リーダーがフォロワーとの間に葛藤を経験するのは稀なことではなく,また同一のリーダーの葛藤管理方略は比較的一貫していることから,状況要因のみでリーダーの葛藤管理方略の用い方を説明するのは困難であった。そこで,組織内葛藤の管理方略を規定する要因に関する先行研究の知見を整理し,リーダーによる目標設定やリーダーの自信などリーダーシップ行動を規定する要因が,リーダーの葛藤管理方略をも規定する要因となり得ることを指摘した。その上で,組織が困難な課題に取り組んでいるときほど,フォロワーへの適切な指示やチーム全体の統括の必要性からリーダーからフォロワーへのコミュニケーション量が増加し,それに伴ってリーダーの葛藤管理方略にリーダーの特性による差異が顕現化しやすくなることを示唆する知見を得た。 調査では,リーダーの個人特性としてリーダーの管理目標,自信,サーバント・リーダーシップ等,組織状況として職務特性やリーダーとフォロワーとの信頼関係等,組織の成果として課題のパフォーマンスや文脈的パフォーマンスを測定し,リーダーによる組織内葛藤の率直な顕在化や葛藤管理方略との関連を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って,リーダーの特性および組織状況が,リーダーの葛藤管理方略に及ぼす影響について検証を行った。その際,リーダーの葛藤管理方略について,フォロワーとの間に葛藤が生起した際に一時的にとられる行動としてではなく,リーダーシップ行動の一環として捉え直すために,これまでに十分にはなされてこなかった理論的な整理を行うことができた。また,昨年度までに実施した実験室実験で撮影された動画の中から,コミュニケーションに関する指標をデータ化し,リーダーの葛藤管理方略にリーダーの特性の効果が顕現化するプロセスについて検証することができた。この成果を論文としてまとめ,関連学会の学術雑誌に投稿する予定である。また,デザインの修正やデータの追加が必要ではあるものの,調査研究も同時に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って,本年度までに実験研究で得られた成果について,結果の妥当性・信頼性や他の解釈可能性を検証できるよう,更なるデータ収集を行うとともに,組織の成果に関するデータの分析を行い,それらとリーダーの葛藤管理方略との関連を検証する。また,本年度までに得られた調査研究の結果を踏まえ,調査項目の整備を行い,更にデータを追加し,これまでに得られた知見の信頼性や妥当性を検証する。さらに,実験研究および調査研究の結果をまとめ,学会大会等で発表,あるいは学術雑誌に投稿できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は,実験・調査の実施および得られたデータの整理・入力・分析に必要な物品の購入および人件費,ならびに研究協力および専門的知識の提供を得るための研究協力者の所在地までの旅費を相当額見積もっていた。しかし,COVID-19感染予防に注力したことによって,見積もっていたほどの回数,実験を実施することができなかった。同様に調査についても十分な数の質問調査票を配布・回収することができず,データの整理・入力・分析を多くは行えなかった。さらに,県外への移動が制限されていたため,旅費等が使用できなかった。これらに加え,昨年度からの繰越金があったことが主な理由である。 繰り越された研究費については,研究協力や専門的知識の提供,図書購入,および論文掲載料や英文校閲などに,有効に活用したいと考えている。
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