研究課題/領域番号 |
20K03315
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
熊谷 智博 法政大学, キャリアデザイン学部, 准教授 (20400202)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 集団間関係 / 第三者集団 |
研究実績の概要 |
集団間関係における第三者集団の影響を検討するという本研究の目的に対して、本年度は集団間紛争場面に対する第三者集団の介入が集団的感情と外集団への態度に与える影響に焦点を当て、質問紙調査による検討を行った。まず予備調査として、紛争状態にある外集団に対して第三者集団が制裁を加え、その結果外集団が謝罪するというシナリオを作成した。シナリオ内要因として、第三者集団と内集団の友好度を操作し、友好国、敵対国、無関係国、及び自国による制裁という4水準を設けた。また制裁によって外集団が謝罪する、または謝罪しないという2水準を設けた。合計80名の参加者はこれら8種類のシナリオのいずれかを読み、従属変数として設けた制裁に対する感情、制裁に対する満足度、メッセージ伝達の程度、公正回復、寛容性、内集団のエンパワーメントに関する質問項目に回答した。制裁に対する感情では第三者集団による差が見られ、無関係国による報復がポジティブな感情を最も高めていた。また友好国や敵対国による報復の影響は無関係国より弱く、自国による制裁の効果は最も低かった。また外集団からの謝罪は怒りや苦しみ、悲しみといったネガティブな感情を弱める効果があった。一方、満足度やメッセージ伝達、エンパワーメントに関しては2要因による直接の効果は見られなかったが、回帰分析の結果、感情からこれらの変数に対する効果が見られた。この事は感情が媒介変数として報復後の態度変化に影響を与える可能性を示唆している。この予備調査の結果に基づきシナリオと項目を修正の上、本調査を実施、600名程度から回答を得ており、現在その分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定では質問紙調査と並行して実験室実験を実施する予定であったが、コロナ禍により実験室が使用できず、そちらの予定は進んでいない。しかし質問紙調査の計画は予備調査を終了し、本調査を実施、データの回収も終わっている。分析がまだ終了していないため、やや遅れているが当初目標は概ね達成できている。また研究成果の発表に関しては、国内外での学会発表を予定していたが、国外の学会は中止となったため、国内での発表に留まった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は質問紙調査で得られた結果を基に、実験室実験による要因の詳細な検証を行う。具体的には第三者集団による代理報復の効果が、第三者との関係性によって調整される可能性を検証する。ただし初年度と同様に実験室の利用が不可能な状況が続くと考えられるので、ビデオ会議システムを利用した実験を新たにデザインする予定である。また国内学会を中心として複数回の研究成果発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に実施予定であった実験室実験がコロナ禍により実施できず、そのため人件費の使用が少なくなった。また国際学会へ2度参加し、研究成果を公表する予定であったが、渡航禁止によりその分の旅費が使用できなかった。今後状況によっては再度国際学会への参加を計画しているが、場合によっては大規模な質問紙調査に予算を振り向けることも検討している。
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