研究課題/領域番号 |
20K03319
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研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
潮村 公弘 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (20250649)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 潜在意識測定 / IAT |
研究実績の概要 |
2020年度は、IAT(Implicit Association Test)技法を活用した「新規なデータ収集システムの開発」に集中的に取り組んだ。この新しいデータ収集システムは、質問紙や調査票を用いて自記式調査の方法でデータ収集を行う「顕在意識指標」の測定と、IAT技法を活用した「潜在意識指標」の測定とをシームレスに行うことを可能とするシステムである。 この新しいデータ収集システムの開発においては、近年では広く採用されている「ウェブ調査(オンライン調査)」との親和性が高いシステムとすることとともに、人為的で意図的な実験操作を含んだ「実験研究」にも展開が容易な汎用性が高いものとなるように配慮して作成している。また個人情報の保護にも十分な留意を行っている。具体的には、このシステム上では回答者の個人を特定する情報を収集することはなく、別のサイトにおいて電子メールアドレスなどの個人情報の収集とモニターIDの発行とを行い、そのモニターIDを今回開発している「新規なデータ収集システム」上での識別IDとして使用するという様式としている。 なお、今回の「新規なデータ収集システム」の開発は難易度が高いため、システム開発やプログラミングを外注(業務委託)することが必要であった。そのための業務委託先の選定や、委託する業務内容の調整や相談、ならびに業務委託契約の締結にも時間とエネルギーを注いだ。2020年度末の時点で、このデータ収集システムの開発は、「試行的な実施での遂行確認」を行える段階にまで到達するに至ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度(研究初年度)には、「研究実績の概要」欄で記したように、IAT(Implicit Association Test)技法を活用した「新規なデータ収集システムの開発」を進めた。当初の計画においては、2020年度(研究初年度)には、大学生を対象とした「プレテスト」の実施とその成果発表を計画していたものの、新型コロナウイル感染拡大という社会情勢下においては、2020年度のプレテスト実施は翌年度に延期することとした。「新規なデータ収集システムの開発」という点でかなりの進展を示すことができた点では、予想よりも大きな進展を得ていると言えるものの、プレテストの実施とその成果発表は延期することとしたため、進捗状況については中間的な評価となっている。 このような状況に対して「おおむね順調に進展している」という評価としている理由は、「新規なデータ収集システムの開発」の開発自体の難易度が極めて高いためである。現在の見通しでは、2021年度の前半にシステムのローンチを計画しており、システム開発後には研究プロジェクトの大きな進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、まずは、2021年度前半のうちに、「新規なデータ収集システムの開発」を完遂できることを目指す。新しいデータ収集システムを利用していくことで、近隣国との多国間関係に関わる認識に関して、1)「IAT技法を用いて測定した潜在意識指標」と、2)「伝統的な尺度構成法を用いて測定した顕在意識指標」という2段階の意識レベルを統合的に捉えるという本研究の遂行目標を実現していく。 さらには、偏見・バイアス低減のための方策として世界中で最も幅広く研究が行われてきた手法(研究アイディア)である「直接接触(法)」を取り入れる。「直接接触(法)」の有効性(すなわち、効果の大きさ)と、影響範囲(どの意識レベルにまで影響が及ぶのか)について実証的に検証可能となるのは、本研究プロジェクトが、顕在意識指標と潜在意識指標を並立測定することにより初めて可能となるものである、 4年間の研究期間で、サーベイ調査(プリテスト研究を含む)と実験研究とを有機的に関連づけながら進め、その知見を基に、近隣国との多国間関係に関わる認識を改善するための関係改善施策の提言まで進めることで、多文化社会化の進展とともに「分断」の進行が懸念される現在の多文化社会への貢献を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、予算金額の多くをデータ収集システムの開発費用に充当した。そのさい、業務委託先に対して、「予算額のオーバーは絶対に認められないこと」と「予算額を次年度に繰り越して使用することは可能ではあること」を繰り返し伝えていた。予算額のオーバーは絶対に認められないことと、システム開発の完成時期を遅らせたくないこととの兼ね合いにおいて、2.5万円が次年度に繰り越されることとなった。比較的少額の次年度使用額が生じたということは全体的には極めて予算額に沿った想定通りの執行ができたものと考えている。なお、この2.5万円の次年度使用額は、2021年度分のデータ収集システム開発費用に充填される。
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