研究課題/領域番号 |
20K03324
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
縄田 健悟 福岡大学, 人文学部, 准教授 (30631361)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 集団間紛争 / 集団暴力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,局所的文化が集団の暴力と反社会性を生じさせるプロセスを解明することである。このプロセスとして(a)コミット型-集団心理と(b)生存戦略型-集団心理の2側面があるという視点から実証的検証を行っていく。特に本研究では,局所的文化に注目して検討を行っていく。正しさの基準は,社会・集団ごとに異なっており,局所的(local)なものである。本研究で呼ぶ「局所的文化(local culture)」とは,国家・民族レベルの文化のみならず,よりミクロな社会・集団ごとに共有された固有の文化や規範も含んでいる。例えば,企業レベルであれば「組織文化・組織風土」である。もしくは,非行集団の暴行事件において,暴力行為が賞賛される風土や,リーダー格に逆らえない空気といったものが該当する。これがいかにして暴力や反社会性をもたらしているのかを検証していく。これまでの実績としては,集団間紛争・集団暴力に関する書籍『暴力と紛争の”集団心理”:いがみ合う世界への社会心理学からのアプローチ(ちとせプレス)』の出版を行ったことが最大の研究の進展である。これにより,集団間紛争と集団暴力において集団規範や局所的な文化が持つ役割に関して,理論的・実証的な整理を行い,統合的な理論的な検討が大きく進んだ。実証研究に関しては,国家レベルの”国家同一視”文化と戦闘意志,集団暴行事件のそれぞれに関して二次分析や調査データの収集・分析を進めている。現在,分析結果を公表すべく準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,局所的文化が集団の暴力と反社会性を生じさせるプロセスを解明することである。本課題では,特に,国家レベル・企業組織レベル・仲間集団レベルなど様々なレベルの集団を対象に実証的検討を行いながら,以上を統合する理論的視座の検討を行っていくことを予定している。理論的統合に関しては,集団間紛争・集団暴力に関する書籍『暴力と紛争の”集団心理”:いがみ合う世界への社会心理学からのアプローチ(ちとせプレス)』の出版を行った。これによって個々の実証研究を整理しながら,理論的統合を行った。また,国レベルの”国家同一視”文化と戦闘意志の実証的検討に関しては,現在分析を現在進めているところである。世界価値観調査を対象に,国レベル(between level)と個人レベル(within level)を弁別したマルチレベル分析を用いたところ,個人レベルよりも,国レベルの国家同一視が国のために戦闘しようとする意志と強い関連があることが確認された。この結果は,再度詳細な追加分析をおこない,現在,論文化を行っている。ピア集団レベルとして,暴力犯罪の集団性を理解すべく,共犯事件の犯罪統計による分析と,暴行事件の新聞記事の計量テキスト分析を行った。その結果,個人よりも集団において,さらに集団サイズが大きくなるほど,犯罪の暴力性が高まることを示した。この分析結果は,論文執筆を終えて,現在投稿審査中である。今後は,裁判事例分析を行うことを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,5カ年計画での研究を予定している。比較的ロングスパンでの課題の実施を予定しており,それぞれの進捗度に違いは出るものの,各計画を同時並行で遂行をしていく。これまで国家レベル,企業組織レベル,ピア集団レベルのそれぞれに対して研究を実施している。国家レベルでは世界価値観調査の二次分析をこれまで行ってきた。企業組織レベルでは,クラウドソーシングを用いた質問紙調査を行い,データ収集と分析を行ってきた。今からは学会報告や論文化を中心的に行っていく。また,ピア集団レベルでは,集団暴行の新聞記事分析に基づく論文の執筆が終わり,現在投稿審査中である。今後は,集団暴力の裁判事例分析を今から行っていくことを予定している。理論的統合に関しては,上述の通り「『暴力と紛争の”集団心理”:いがみ合う世界への社会心理学からのアプローチ(ちとせプレス)』を公刊したことで,理論的な整理が進んだ。さらに上記の個別の実証研究を行った結果を本書で書かれた理論に位置づけることで,さらなる理論的精緻化を試みていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症により出張や調査実施が十分にできなかったため。翌年以降に実施していく。
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