研究課題/領域番号 |
20K03326
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
和田 裕一 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80312635)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 共感性 / マンガ / 眼球運動 / 個人差 / 性格 |
研究実績の概要 |
共感性を測定する研究手法の一つに、人物の表情を写した画像や動画を観察する際の視線情報を用いるアプローチがある。本研究では、その際の提示刺激として“マンガ”が有効であるとの仮説に立脚し、マンガを読む際の視線の動きの特徴から読み手の共感性を推定することを試みる。実験では参加者がマンガを読む際の視線の動きをアイトラッカーにより記録し、同時に、共感性等の性格特性を測る心理尺度に対する回答を求める。分析では、注視時間やサッケード距離等の視線情報を特徴量とする機械学習モデルを構築し、マンガ読解時の視線情報から読み手の共感性等の性格特性の有り様を精度よく判別できるスクリーニングシステムの構築を目指す。 令和3年度は、(1)前年度に実施したオンライン上で実験参加者にマンガを読んでもらう実験のデータ解析と、(2)本来初年度に予定していたアイトラッカーによる実験室実験の遂行を、主な研究計画として予定していた。 このうちの(1)についてはほぼ順調に進んだ。具体的には、230名の読み時間データを解析した結果、Big5性格特性のいくつかの側面に関して個人の得点レンジをを予測する機械学習モデルを構築することができた。本研究の主眼である共感性については機械学習モデルの予測精度はいまだ十分ではなく、特徴量の見直し等の再検討が必要である。 (2)については全く進められなかった。この理由については後述する。実験室実験の代わりに、前年度に構築したオンライン実験システムを改良してたンライン上でのマンガの読み時間を計測する実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「やや遅れている」と自己評価した理由は、本年度の実験計画(2)として予定していたアイトラッキング実験を実施できなかったことによる。コロナ感染状況の改善に伴い、本年度は不特定多数の実験参加者を実験室に招いての実験が遂行可能との目処がついていたが、2021年2月13日に発生した福島県沖地震により、本実験で使用予定であったアイトラッカーが設置台から落下したことにより破損し、使用不可能となった。すぐには代替となるアイトラッカーを手配することができず、本年度中の実験実施を見送るざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
アイトラッカーの手配に目処がついたため、最終年度にあたる本年度は、実験室でのアイトラッキング実験を実施する。刺激材料の選定等の準備はすでに終えているため、実験の体制が整い次第、実験参加者を募り、実験を開始する。注視時間やサッケード距離等の視線情報を特徴量として読み手の性格を予測する機械学習モデルにおいて高い精度を実現するには、事前の例数設計にて少なくとも100名を超えるサンプルが必要と推定されるが、この値に近づけるようにデータの蓄積に尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、実験設備の故障により当初の計画で予定していた実験を遂行することができず、これに係る支出(アイトラッキング実験参加者謝金、データ分析補助業務に対する謝金、旅費)が生じなかったことによる。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画の主な内訳は、アイトラッキング実験環境の構築にかかる費用とアイトラッキング実験参加者謝金である。
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