研究課題/領域番号 |
20K03337
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 崇達 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (70321148)
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研究分担者 |
梅本 貴豊 京都外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50742798)
中谷 素之 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (60303575)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自己調整 / 共調整 / 社会的に共有された調整 / トランジッション / 高等教育 / 社会人教育 / 学習支援 / 生涯学習 |
研究実績の概要 |
2020年度には,知的な思考や創造性を伴う協働活動において3つの学びのモードを捉える尺度と,協働活動への動機づけの認知的要因,エンゲージメント(活動への没入)や社会性に関する尺度との関連性について量的な検討を行った。2021年度は,質的な側面にもさらに目を向けて,学びあいにおける「調整のプロセス」の解明をめざした。コロナ禍において実行可能な研究アプローチに修正を行い,社会的な相互作用の中でも,学びあいの自己調整をメンバーの相互でどのように支え合っているのか(自律性支援のあり方),そして,それらの時系列的な変化にも迫ることを試みた。 高等教育の文脈から実社会の現場へのトランジッションを視野に入れたものであるため,2021年度も,国公立大学及び私立大学の大学生と多様な職種を含む社会人有職者を研究対象にして,検証を進めた。3つの学びのモードとして自己調整学習,共調整された学習,社会的に共有された学習の調整の視点に基づき,協働活動への動機づけの認知的要因,協働活動自体の自律的動機づけ,調整のプロセスとかかわって学びをどのように支援していたか,また,どのように支援を受けていたかについて調べた。そして,これらの関係が時系列とともにどのように変化したかについても検討を重ねている。 2020年度に引き続き,本研究では,とりわけ3つの学びのモードにおけるモチベーションの調整のあり方について示唆を得てきている。我が国では,令和の日本型学校教育の理念が掲げられたところであるが,中教審答申などでは「個別最適な学び」とともに「自ら学習を調整しながら学びを進めていく」ことの重要性が強調されるようになってきている。本研究では,自己調整学習の考え方を基盤に,社会的な相互作用を深く組み込んだ学習理論への展開を図り,これまでの知見から実践上かつ理論上の示唆を得てきているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度も,新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的流行が続いており,いくつもの波が押し寄せた。所属先の大学では,オンラインが主となっており,従来どおりの対面での教育活動,そして,研究活動は依然として困難な状況となっている。研究の方法論上の修正や変更についても,適宜,検討を重ねてきた。オンラインでも実施できる検証方法へ軌道修正を行うことで,概ねのところ順調な形で遂行ができている。研究目的に即したエビデンスが得られてきているところである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の遂行は,概ねのところ順調ではあるが,新型コロナウィルス感染症の流行が未だ終息に向かう見通しはなく,難しい状況が続くものと考えられる。対面での研究の実施には様々な制限が生じることが予測される。2022年度の研究計画では,量的及び質的アプローチにより,トランジッションと「主体的な学びあい」のプロセスについて,さらなる解明をめざしていくが,現実社会と教育現場の動向に留意しながら,オンラインと対面の両方の可能性を視野に入れつつ,研究を着実に進めていくことする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的流行によって,研究資料などで海外からの納品が遅れたものがあった。いくつかの出張も取り止めざるを得なかった。研究計画の実施,そして,分析及び論文化の検討,作業にあたって,研究資料等の購入や出張にかかる費用を次年度に繰り越して使用することとした。
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