研究課題/領域番号 |
20K03338
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
池田 幸恭 和洋女子大学, 人文学部, 教授 (70523041)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 親子関係 / 親の老い / 成人期 |
研究実績の概要 |
現代日本で少子高齢社会が進行する中で、親子関係は長期化し、生涯における親子関係の重要性が高まっている。成人期において親の老いを認知することが、親子関係に変化をもたらし、子の発達を促すと予想する。本研究の目的は、親の老いの認知が成人期の親子関係に与える影響について明らかにすることである。令和3(2021)年度は、研究1「親の老いの認知と親の老いに対する態度との相互関係(縦断的検討)」の3回における1時点目の調査を実施し、研究2「親の老いの認知に関連する要因の検討」ならびに研究3「親の老いの認知が及ぼす親子関係の変化(インタビュー調査)」の調査準備を進めた。 研究1では、40代・50代の2323名(40代男性529名、女性640名;50代男性521名、女性633名)へ令和4(2022)年2月下旬に、親の老いの認知と親に対する態度、地域見守り自己効力感、生活状況などについてweb調査を実施した。親の老いの認知について「親の活動性減退」と「親の心理的成熟」の2因子が抽出された。親の老いに対する態度について、「親の老いへの悲哀」、「老いた親への配慮」、「親の老いによる世代継承性」、「親の老いに基づく無常感」、「親の老いに伴う負担感」の5因子が抽出された。親の老いの認知と親の老いに対する態度との関連が確かめられ、特に「親の老いへの悲哀」は「親の活動性減退」と「親の心理的成熟」の両方の認知と正の関連がみられた。 研究2では、40代・50代の800名(年代別に男女200名ずつ)を目標にweb調査を行うことで、親の老いの認知と、親に対する感謝、親子間葛藤、老親扶養意識との関連を検討する。成人期の親子間葛藤に関する関連研究を整理して、調査項目を修正した。研究3における親の老いの認知が及ぼす親子関係の変化に関するインタビュー調査の内容について、ライフコース論を参考にして検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3(2021)年度もCOVID-19の流行拡大による影響が続き、外出自粛や社会的距離の確保、そして離れて暮らしている親と会うことができない状況がみられた。このような親子関係の状況の変化は、本研究の主題である親の老いの認知が成人期の親子関係に与える影響とも関係することが予想された。特に調査を予定していた「親の老いの認知」に関する項目は、1年間の親の様子について回答を求める内容であるため、COVID-19に伴う影響が大きいと判断した。 交付申請時の研究計画では、令和3(2021)年度は研究1「親の老いの認知と親の老いに対する態度との相互関係」の縦断的検討における2時点目の調査期間、研究2「親の老いの認知に関連する要因の検討」の調査実施の予備期間であり、ならびに研究3「親の老いの認知が及ぼす親子関係の変化」の調査を開始する予定であった。しかし、前述した状況を踏まえた研究計画の変更に応じて、令和3(2021)年度は研究1「親の老いの認知と親の親に対する態度との相互関係」の1時点目の調査を実施し、その他の研究の調査準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4(2022)年度には、研究1「親の老いの認知と親の老いに対する態度との相互関係」の縦断的検討における2時点目の調査を令和5(2023)年2月頃に実施する計画である。縦断調査の期間の延長も視野に入れて検討している。令和3(2021)年度調査では、一週間の外出頻度を尋ねることで外出自粛の状況が親子関係へ及ぼす影響を考慮した分析を行っており、この対応についても継続する。 そして、令和4(2022)年度前半には研究2「親の老いの認知に関連する要因の検討」のweb調査を実施し、後半には研究3「親の老いの認知が及ぼす親子関係の変化」における親の老いを認知したことで親子関係が変化したことに関する自由記述を収集た上でインタビュー調査を実施する。研究1の縦断調査と同様に、調査期間の延長も視野に入れている。 各研究は、所属研究機関に設置されている「和洋女子大学人を対象とする研究倫理委員会」の承認を得て実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19に伴う影響を考慮して調査時期を変更したことによって、令和2(2020)年度に実施予定であった研究1の縦断的検討の初回調査を令和3(2021)年度に行い、研究2を令和4(2022)年度に実施することになった。そのため、各研究のweb調査費用について、次年度使用が生じた。 この計画変更に伴い、データ分析に用いる統計ソフトウェアの購入などによる物品費、学会における研究成果発表のための旅費についても次年度使用とした。
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