研究課題/領域番号 |
20K03339
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
鵜木 惠子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 教授 (70383338)
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研究分担者 |
菊池 和美 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 教授 (00406703)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 軽度認知障害 / ICT / 携帯端末機器 / 高齢者 / コラージュ / セルフコンパッション / マインドフルネス / 回想法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、軽度認知障害者の認知症予防プログラムの開発を行うことである。具体的には「慈悲i-Collage回想法は、軽度認知障害の高齢者に対して①認知機能の向上、②抑うつ気分の低減、③対人的交流頻度や④人生満足度の向上といった効果をもたらすかを、従来の回想法実施群とのランダム化比較実験を実施し、その有効性を検証すること」とした。 慈悲i-Collage回想法とは、「表現者自身が日常生活の中で心惹かれた対象をスマートフォンなどの携帯端末機器で撮影し、タブレット型端末機器上で写真編集ソフトウェアにより、その写真素材を切り抜いたり、拡大縮小、複製するなどして、より自身の内的世界のイメージにあったコラージュ作品を1枚の画面に再構成、保持する自己表現技法」であるi-Collage技法を回想法に取り入れた独自の手法である。 2020年度においては、慈悲i-Collage回想法を実施するための具体的なプログラムを構成し、予備的調査として高齢者施設(豊島区区民ひろば23か所)に研究協力者募集を行った。その結果、健常高齢者17名(介入群13名・統制群4名)を対象として実施した。介入群には、グループで慈悲i-Collage回想法を2週間毎4回(ベースライン・振り返り・フォローを合わせて計7回)実施し、統制群にはグループで従来の回想法を2週間毎4回(前後合わせて計7回)実施した。手続き上の課題を明らかにし、改善すべき点は調整済である。 その結果i-Collage回想法を行った介入群は、従来の回想法を実施した統制群に比べて、iPadなどの電子機器への関心向上、マインドフルネスへの関心向上、今後の問題解決能力への自信、プログラムの実施が自分の人生の集大成といった意識において、有意に高かった。以上より従来の回想法よりも高齢者の人生の統合や自信につながる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍にあり、高齢者施設の一時閉鎖の時期もあったが、研究者自身が近隣の複数施設に積極的に出向き、感染予防対策に十分注意して実施したことで、予想以上の研究協力者に参加していただくことができた(計画では介入群と統制群各4名の予定であったが、介入群13名統制群4名に実施した)。ただし解析のためには、統制群の人数が十分とは言えないので、今後さらに重点的に募集、実施していく。 軽度認知障害者についても、クリニックにて準備が整い、実施中であるため、さらに多くの軽度認知障害者に協力をお願いし、適切なプログラムを作成するとともに、効果検証を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
地域在住健常高齢者を対象とした予備的な研究では、統制群の人数を増やし、効果検証の結果を明確にしたい。また量的分析のみならず、グループのダイナミズムをより適切に把握するために、質的分析の手法も取り入れる予定である。 軽度認知障害者向けには、健常高齢者向けとは異なる配慮が各所に必要であることがわかったため、プログラムの精緻化を進め、介入群・統制群への実施を本格的に推進していく。 2021年7月にはInternational Congress of Psychology(チェコ・ハイブリッド学会)での発表を予定している。国際的な視点からも研究のブラッシュアップを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍のため、遠方の出張や国際学会などが軒並み対面では中止となり、当初予定していた旅費や関連する経費を使用する必要がなくなったため、次年度使用額が生じる結果となった。 2021年度後半には、ワクチン接種率や感染状況の緩和が見られた際には、国内外の対面による学会出張が可能となるため、次年度使用分によって、American Psychological Assosicationへの発表・参加登録を行い、対面での研究者間の情報交換や交流などを積極的に行う予定である。
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