研究課題/領域番号 |
20K03341
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
長崎 勤 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (80172518)
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研究分担者 |
吉井 勘人 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (30736377)
板倉 達哉 文京学院大学, 保健医療技術学部, 非常勤講師 (90817157)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム / インクルーシブ保育 / 子供同士の関わり / ブレークダウン / 保育士の支援 / 情動調整 / コミュニケーション |
研究実績の概要 |
1.「子供同士の相互交渉アセスメント」方法の開発:(1)タイムサンプリング(量的分析) (2)エピソード分析(質的分析)における「ブレークダウン要因分析」の方法の妥当性の検討:障害児の保育園での子供同士の相互交渉の予備観察から、以下の検討を行った。B1:ブレークダウンの生起の要因についての行動下位カテゴリーを検討した。I:保育者の支援・調整的介入(Intervention)の行動下位カテゴリーを検討した。また、Ip:保育者による共有の促し、を新たなカテゴリー項目として、加えた。その結果、「子供同士の相互交渉エピソード分析カテゴリー(VER10)」が完成した。(研究分担:吉井勘人・板倉達哉) 2.観察の開始と分析(一部): 自閉症スペクトラムT児およびM児への「子供同士の相互交渉アセスメント」方法の適用とアセスメントに基づくコンサルテーション(助言)の試み:ブレークダウンの際の保育者の子供への支援は、7月の「身体援助」や「指示の繰り返し」が、11月、2月にかけて徐々に減り、「共同注意の促し」や「T児の意図を説明する代弁」が増加した。保育者の支援前後の「共有の水準」の変化(SS1→SS2)は、7月には「やや低い」から「やや高い」が増加し、11月には「普通」から「やや高い」が増加した。2月には「普通」から、「やや高い」および「高い」共有の水準へと変化しており、これにより保育者の関わりの一定の効果が認められた。 以上のアセスメントを元に、支援の方向を保育者と協議し助言した。11月には、保育者がT児に対し保育者の意図の説明(代弁)を行うことで、T児による代言模倣を促すことが必要であることを助言した。(研究分担:吉井・板倉) 3.学会・研究会での研究発表:日本特殊教育学会、日本発達心理学会などで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言の発令により、保育園、幼稚園での観察機会が制限されたが、保育園の協力により感染が比較的少ない時期に観察を行うことができた。そのために、観察回数は制限されたが、「子供同士の相互交渉」における分析カテゴリーの妥当性検討のための貴重なデータが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
自閉症スペクトラムH児が通園する年長クラスにおいて、幼稚園での典型発達児との子供同士の関わりの観察・分析を行う予定である。また、その観察結果をもとに、今年度の自閉症スペクトラムT児の変化との比較検討を行う。 自閉症スペクトラムT児は小学校・特別支援学級に入学するため、通学する小学校の協力が得られれば、クラスでの他児との子供同士の関わりを分析する。また引き続き、大学において仲間役(ピア)との協同活動とコミュニケーションのアセスメントと支援を行い、子供同士の関わり方のアセスメントと支援方法を検討する。 アセスメントに基づく支援方針の策定方法の開発が研究課題の一つとなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、緊急事態宣言の発令によって、保育園・幼稚園での訪問が制限され、観察・分析のための謝金の使用が予定より少なかった。また国内学会がリモートで行われたために、旅費の使用がなかった。海外学会が延期・中止になったために海外渡航の旅費も支出もなく、次年度以降に繰り越しとした。 海外学会での渡航旅費・発表費用、幼稚園、学校での観察のための謝金、ビデオ機材等の購入の予定である。
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