研究課題/領域番号 |
20K03342
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
敷島 千鶴 帝京大学, 文学部, 教授 (00572116)
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研究分担者 |
川本 哲也 国士舘大学, 文学部, 講師 (40794897)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 遺伝と環境 / 学力 / 非認知能力 / 双生児 |
研究実績の概要 |
2022年2~3月、「学力と生きる力のふたご家族調査」第3回を実施した。収集したデータの分析は2023年度に行うことになるが、その前に「学力と生きる力のふたご家族調査」第1回、第2回の収集データの分析を行い、2021年8月、日本社会心理学会第62回大会において、ワークショップ「社会的不平等の原因論―遺伝環境相互作用の立場から」を企画し、得られた知見を報告した。 研究代表者は、「行動遺伝学からみた学力格差―子どもの学力に個人差を作る要因は何か」というタイトルで話題提供を行った。小学生の学力には、その家の家庭環境が顕著に影響を与えるが、中学生の学力には、個人の遺伝の影響の方が優位になること、家庭の収入は家庭環境の一部しか説明しないことを報告した。欧米の行動遺伝学研究は、学力には小学生から顕著な個人の遺伝要因が寄与することを一貫して示しており、日本の小学校教育は子どもの遺伝的能力を発揮させていない可能性を示唆した。 研究分担者は、「父親による養育と子どもの情動知能の発達」というタイトルで話題提供を行った。父親の養育行動は非共有環境を介して、同時相関的かつ縦断的に情動知能の個人差に関連していることを報告した。父親による養育行動の多寡が、10代の子ども達における非認知能力の発達に無視できない影響を与えていることが示唆された。その他、研究分担者は、非認知能力と認知能力の間の関連性とその背後の遺伝環境構造や、非認知能力に含まれる一つの特性である利他性の個人差における遺伝環境構造に焦点をあて、双生児データを用い検討した結果を論文として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年4~12月、小学5年生から高校3年生まで8学年分の学年別子ども用調査票、及び、母親への調査票、父親への調査票を作成した。第1回、第2回調査と比較可能となるよう、同一の項目を維持したほか、中学卒業後の進路選択に関する新たな項目や、新型コロナウィルス感染症への対策、コロナ禍での心理などに関する項目の追加を行った。 2022年1月、対象となる双生児家庭に協力依頼の手紙を発送し、協力の可否を同封のハガキで返信してもらった。 2022年2~3月、協力の意思を示した家庭を対象に「学力と生きる力のふたご家族調査」第3回調査を郵送で行った。協力家庭数は700を超え、第1回の722家庭、第2回の740家庭とほぼ同等であった。コロナ禍にも関わらず、協力を維持できたことは幸いである。 2022年4月より予定通り、返却された調査票を整理し、学力テストの採点作業を始めている。 類似の項目を含み、並行して行われている「日本子どもパネル調査」2020年データがまだ公開されていないため、 比較分析の実施には至っていないが、その点を除き、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2022年度の前半には、収集した調査票のデータ入力と、データクリーニングを済ませ、これまでに収集した全データとも連結し、速やかにデータ分析を開始する。海外へ出向いての学会発表は叶わない可能性もあるが、論文執筆を積極的に行い、貴重なデータから得られた知見を広く公表していく。 協力家庭には、今回の調査全体の簡単な結果を郵送とホームページ上でフィードバックし、希望者には学力テストの個人結果を開示する予定である。 本研究課題終了後も継続して協力家庭を追跡し、双生児パネルデータをさらに充実できる体制を構築していきたい。
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