未来に実行すべき行為を記憶し、それを適切な時機になったら想起・実行することが求められる課題を展望的記憶課題(prospective memory tasks)と呼ぶ。約束の時間になったら忘れずに知人を駅に迎えに行くこと、食事を終えたら忘れずに血圧の薬を服用すること、就寝前には忘れずにストーブの火を消すこと等が展望的記憶課題の例である。そして予定のし忘れ(展望的記憶課題実行の失敗)は、高齢者が健康や有能感を維持しながら自立した生活を安心して営むことを難しくしている。本研究では展望的記憶課題の失敗に関わるメカニズムとして意図存在要素に着目し、その加齢変化や規定因、機能の実証的解明と理論的検討を行うことを通して、展望的記憶課題失敗の防止に資する知見を得ることを目的とするものである。なお意図存在要素とは、今後自身が何かしなければならないという想いや、意図の強度など、意図状態に関する情報の記憶のことを指す。2023年度にも2022年度に引き続き展望的記憶課題の意図存在要素の特性に関するオンライン事態における研究を幅広い年齢層の対象者の協力を得て実施した。その結果、実行時期までの期間の長さと意図状態との関係は、年齢群によって異なること等が示唆された。本研究により得られた知見は14th Biennial Meeting of the Society for Applied Research in Memory and Cognitionや日本心理学会第87回大会、64th Annual Meeting of the Psychonomic Societyにて発表された。また、これまで得られた知見や学会発表での議論に基づく論文のうち1報は公刊され、1報は査読中である。
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