| 研究課題/領域番号 |
20K03352
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| 研究機関 | 大分県立芸術文化短期大学 |
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研究代表者 |
藤田 文 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 教授 (50300489)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 交代制ルール / 幼児期 / 協同行動 |
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| 研究実績の概要 |
本研究の目的は、幼児の協力場面における自己と他者の関係調整の年齢差と性差を、交代制ルールの産出を中心に検討することである。4歳児と5歳児にビー玉落としゲーム場面を設定して、同性同年齢の二人組で取り組んでもらった。幼児二人の前にビー玉を落とす穴があり、どちらの穴に入っても二人とも報酬がもらえる平等条件と、自分の方の穴に入った人のみが報酬をもらえる競争条件が設定された。藤田（2018）では、協力ゲームの得点が非常に低く、年齢差と性差が不明確だったが、藤田（2019）では、得点が高くなり年齢差と性差も確認された。2年度は、この結果が一貫していない部分を検討するために、藤田（2019）で得られたビデオデータを詳細に行動分析し、幼児の関係調整の発達を明らかにすることを目的とした。
分析の結果、藤田（2019）で変更された教示の効果が明らかになった。紐を引く動作だけでなく紐を押して緩める動作に関する教示よって、幼児の課題の理解が改善し協力行動が可能になることが明らかになった。さらに、相手への指示を示す指差しと得点時の喜びを示す身振り、相手への視線とアイコンタクトの数を算出し、年齢、性別、報酬条件で比較した。その結果、身振りは5歳児の方が4歳児よりも有意に多く、視線は女児の方が男児よりも有意に多かった。また、ゲーム開始時のアイコンタクトは、5歳児の方が4歳児よりも、平等条件の方が競争条件よりも、競争条件で5歳児の方が4歳児よりも、4歳児で平等条件の方が競争条件よりも多かった。さらに、アイコンタクトは、平等条件では女児の方が、競争条件では男児の方が多かった。
4歳から5歳にかけて、ゲーム開始時から相手を意識して、非言語コミュニケーションを使って協同行動を成功させるように発達することが示唆された。また、男児より女児の方が、相手への配慮が大きく、協同行動を早く発達させることが示唆された。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は、やや遅れている。2年度は、藤田（2019）の幼児の協力場面における仲間との関係調整の発達の実験を受けて、詳細な相互作用の分析を計画していた。身振りや視線やアイコンタクトなどの観点からビデオ分析を詳細に実施し、非言語的コミュニケーションの側面の年齢差と性差を明らかにできた。また、仲間関係に関する近年の研究動向をまとめて、大学の研究紀要にレビュー論文を掲載することができた。これらの点では、ほぼ計画通りに実施できたといえる。しかし、交代制ルールの観点からの分析までは至らず、また、コロナウイルスの感染拡大のため、保育園に出向いて行う幼児を対象とした新たな実験を実施することはできなかった。
また、大学生を対象に、協力行動の発達の完成形と関係調整における交代制ルールの機能や関係調整の発達に必要な社会的スキルを明らかにすることも計画していたが、大学生を対象とした実験を実施できなかった。協力行動の実験では対面での相互交渉が必要となり、やはりコロナウイルスの感染防止のため、実験を実施することはできなかった。しかし、オンラインでの相互交渉の実施の可能性を探る実験や、交代制ルールと関連した互恵性に関するオンラインでの意識調査などは実施できた。そのため、3年度では、これらの研究結果を発表し、このような手法も選択肢として取り入れながら大学生の協力行動に関する研究も進める予定である。
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| 今後の研究の推進方策 |
3年度は、幼児の協力場面における仲間との関係調整の発達を明らかにするために、2年度の分析をさらに交代制ルールを中心に進めていく。交代制ルールと非言語的コミュニケーションの関連について明らかにすることを第1の目的とする。また、幼児の協力課題であるビー玉落としゲームの実験を実施する。従来は同性の二人組でのゲームにしていたが、関係調整の性差を明らかにするために男女混合の二人組でゲームを行い、交代制ルールを中心とした関係調整の特性を検討することを第2の目的とする。女児の方が協力得点が高く、相手への視線が多く他者への配慮が大きいことが従来の研究で示されている。男女混合でゲームを行った場合、女児の特性が作用し、協力行動が成功しやすくなるのではないかと予想される。しかし、コロナウイルスの感染状況に応じて、慎重に実験の実施を考えていく。
また2年度に実施できなかった大学生の協力行動（紙コップ積み立て課題）の実験を行い、協力行動と関連するソーシャルスキルを特定することを第3の目的とする。さらに、協力行動課題を複数回実施して、協力場面における役割の交代制ルールを中心とした関係調整の改善過程を明らかにする。交代制ルールに関する意識やそれに関わるソーシャルスキルが特定されれば、幼児協力行動の場面にも適応し保育に必要な支援にも何らかの示唆を与えることができると考えられる。大学生の実験に関しても、コロナウイルスの感染状況に応じて、慎重に実験の実施を考えていく。
2年度に実施した研究成果を、9月に行われる日本心理学会と教育心理学会において発表し、大分県立芸術文化短期大学の研究紀要に論文を投稿する予定である。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
洋書の文献を購入したが、注文から納品までの期間がかかり、また最終的な金額の確定が遅れたために、期間中の少額の未使用額が生じてしまった。翌年度分として請求した助成金と合わせて、今年度分の研究成果の学会発表の際の大会参加費や、実験実施の際の機材の購入として使用していく計画である。
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