研究課題/領域番号 |
20K03354
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
増井 幸恵 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (10415507)
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研究分担者 |
権藤 恭之 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (40250196)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 老年的超越 / 高齢期 / 加齢変化 / 心理的well-being |
研究実績の概要 |
2023年度は2010年(70歳群)、2011年(80歳群)、2012年、2015年、2018年(以上90歳群)にベースライン調査を行った参加者(2023年年齢範囲:82~101歳)の第5波追跡調査を会場招待型調査で実施し、老年的超越などの測定を行った。2023年度の参加者合計は144人(70歳群35人、80歳群90歳群109人)であった。70歳群の第5波追跡調査は2023年度で完了し、参加者数は420人となった。80歳群90歳群については2024年に2023年の未受診者に対して再度リクルートを行い調査を実施する予定である。 一方、3~4年ごとに1~4回の調査で測定された第4波までのデータを用いて、老年的超越尺度合計点の加齢変化を検討した。分析には70歳群、80歳群、90歳群の3,011人のデータを用いた。線形混合効果モデル分析を用いて以下の仮説を検証した: 1.老年超越性は年齢とともに増加する。2.老年超越性の増加の大きさは性別と年齢層によって異なり、これらの効果はコントロール変数で調整した後でも有意である。 混合効果モデルの結果から、教育年数、同居者の有無、健康度自己評価、手段的日常生活動作、精神的健康をコントロールすると、平均的な老年的超越得点は時間の経過とともに増加することが示された。ベースラインでは、女性と高年齢群で老年的超越が有意に高かった。老年的超越の加齢変化の大きさは、年齢に関連し、70歳群では向上、80歳群では安定、90歳群では低下することが示された。これらの結果から、老年的超越の高齢期の広い範囲にわたる加齢変化が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題は老年的超越の70歳代から90歳代までの高齢期の広い範囲での加齢変化つまりは老年的超越の発達を検討するものであった。再延長期間の2024年度までにベースライン調査から約12年間、5回に渡る追跡調査(ベースライン調査も含む)を行い、調査時の年齢範囲は69歳から101歳までをカバーすることができた。 そのうちベースライン調査から第4波調査までの9年間のデータを用いて、高齢期の老年的超越の加齢変化を明らかにすることができた。この研究結果は論文化され、Journal of Adults Development誌に2024年5月6日付でアクセプトされ、現在印刷中となっている。 再延長により第5波調査までのデータを分析することが可能になるため、更に長期にわたる老年的超越の発達傾向が明らかにできるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
再延長により、以下の3点を明らかにしたい。①老年的超越のベースライン調査から第5波調査までの12年間の老年的超越の発達軌跡を明らかにする、②老年的超越の発達傾向についてタイプ分け(向上タイプと向上しないタイプなど)を行い、そのタイプ分けに関連する要因を明らかにする。③70歳群の年齢が80歳を超えた時点でのデータを収集できているため、80歳群の初回調査の値を比較し、老年的超越のコホート差について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間中である2020年から2021年にかけてコロナ禍のため会場調査ができなかった。また参加者の高齢化やコロナ禍以降などによる会場招待型調査へ参加者が減少し、令和6年度に引き続き5回目の追跡調査を行うことになった。 令和2024年度は令和2023年度に募集を行った93歳以上(令和6年度は94歳以上)の調査対象者(2011年以降1度でも会場調査に参加した者)のうち、2023年度に調査に参加しなかった未受診者に対する会場招待型調査を実施し、その調査実施費用として使用する予定である。
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