研究課題/領域番号 |
20K03360
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
関口 貴裕 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 教授 (90334458)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 領域知識 / ワーキングメモリ / 文章読解 / マインドワンダリング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,学習場面で重要な活動である文章読解を対象として,その成績にWM能力と領域知識が与える影響が,1)文章読解の処理プロセス(命題表象生成 vs 状況モデル構築),2)WMに保持する刺激の性質(複数情報の統合あり vs なし)によりどのように異なるかを,実験的手法を用いて明らかにすることである。また,WM能力がマインドワンダリング(課題無関連思考)を介して読解に影響するという知見を踏まえ,領域知識がこれらの関係性のどこに影響するかを調べることで,WM能力と領域知識が読解に与える影響のメカニズムの詳細を明らかにする。これに関し,令和2年度は以下の2つの研究を行った。 1)実験に関する文章刺激の検討: 本年度はコロナ禍による制約のため,実験参加者を集めてのデータ取得は行わず,文章読解におけるWM能力と領域知識の関係を調べるための文章刺激の選定と,課題に使用する読解問題の作成を行った。その際,領域知識の要因を操作するために,実験参加者の知識に差が出やすい文章と問題(例:ハリー・ポッター)を作成した。 2)マインドワンダリングが創造的思考に与える影響の検討: 本研究で注目する重要な心的要因であるマインドワンダリングに関する基礎的研究として,マインドワンダリングが創造的思考に与える影響について,本研究で新規に採用した「コメ名称問題」(Yamada & Nagai, 2015)で検討した。65名を対象にしたオンライン実験の結果,マインドワンダリングの生起が創造的思考のうち,特に拡散的思考に影響することを,本課題で明確にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では大きく,1)文章読解の各プロセスがWM能力と領域知識の関係に与える影響,2)文章刺激の特徴が,WM能力と領域知識の関係に与える影響,3)領域知識がWM能力,マインドワンダリング,文章読解の関係に与える影響,の3つの検討を行うが,令和2年度はコロナ禍による制約のため,実験参加者をえてのデータ収集が出来ず,いずれも文献的検討や実験で使用する刺激の検討,関連する研究の実施など,準備段階にとどまり,具体的な検討に入ることが出来なかった。 以上より,初年度としては今後の研究に向けての準備を進めることはできたが,研究課題の目的に即し,一定の成果がえられたとは言えないため「遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は令和2年度の研究成果や関連する成果を論文誌,学会等で発表するとともに,令和2年度に用意した文章刺激ならびに課題の妥当性をオンラインアンケートで確認し,早急に実験データの収集に入る。その際には,実験用コンピュータを5~10台,使用することで効率的にデータを収集するとともに,クラウドソーシングによるデータ収集も活用する。実験は,1)文章読解の各プロセスがWM能力と領域知識の関係に与える影響,2)文章刺激の特徴がWM能力と領域知識の関係に与える影響の検討を先行して行うが,研究の効率化のために,それらの検討に3)領域知識がWM能力,マインドワンダリング,文章読解の関係に与える影響の検討を統合して実施することも考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)令和2年度に計画した研究において実験データの収集ができなかったため,実験用機器の購入にあてる物品費や謝金を執行することができなかった。また,参加予定の学会大会がすべてオンライン開催となったため,旅費の執行もできなかった。以上より,残額を次年度使用額とした。 (使用計画)令和2年度に実施予定であった実験を実施することにより,次年度使用額(特に物品費,謝金)を計画通り執行していく。
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