研究実績について、大きく2点に整理することができる。 第1は、継続的な授業参観により、協働学習に対する不安への教師の支援のあり方を明らかにしたことである。年度当初から、教師は他者の考えを聴くことの重要性を伝えることに加えて、実際にペアや学級全体の話し合いの中で他者の考えを聴く機会を頻繁に設け、そこで聴いている児童の姿を取り上げて共有するなどして価値づけていた。一方で、そうした支援は徐々に減少し、年度の後半にはそうした教師からの支援がなくても、他者の発言にあいずちをうちながら応じて聴いている児童の姿が見られるようになった。また、これと並行して教師はわからないことを共有することについても繰り返しその重要性を伝え、わからなさを語る場面を授業の中にで作ることで、わからなさを認め、共有し、応じて行くことで協働的に学ぶ機会を形成していた。 第2は、質問紙調査により、協働学習における学習行為に対する児童の認識を測定する尺度を作成したことである。昨年度の調査によって得られた、協働学習に対する「好きなところ」「得意なこと」「苦手なこと」「不安なこと」について自由記述から協働学習行為認識尺度原案として43項目を作成し、中学生245人を対象に質問紙調査を実施した。結果,3因子35項目(「肯定的認識」因子、「協働に対する不安」因子、「協働に対する自信」因子)が得られた。作成した協働学習行為認識尺度の信頼性を求めたところ、クロンバックα係数は「肯定的認識」因子が.95、「協働に対する不安」因子が.93、「協働に対する自信」因子が.87であり尺度の信頼性が確認された。また、協働学習行為認識尺度の各下位尺度と協同作業認識尺度、学級適応感尺度との相関係数を算出した結果,協働学習行為認識尺度の併存的妥当性が確認された。
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