研究課題/領域番号 |
20K03375
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
安田 哲也 東京電機大学, 理工学部, 研究員 (90727413)
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研究分担者 |
池田 まさみ 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 教授 (00334566)
伊藤 恵子 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 教授 (80326991)
増田 早哉子 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 講師 (90415365)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スカラー含意 / 意図共有 / コミュニケーション / 思考 / 発達 |
研究実績の概要 |
本研究は、コミュニケーションにおける思考力の基盤を探るために、スカラー含意からの検討を行う。スカラー含意とは、関連する語意味の間にスケールを想定し、人はある意図を伝えるために適切な語を選ぶということを前提とした意図推論である。日本語ではこのスケールを明示的に表現しなくても、含意が伝わる場合がある。例えば「研究室にはお金持ちの学生がいます」のような文である。この研究課題では、このような刺激文を用いて、状況や発話構造を操作し、発達とその解釈の関係性を調べる。 R2年度の研究A「文脈情報と情報取得における特徴が発話意図推測に寄与するのかを調べる」の進捗に関しては、Yasuda and Kobayashi(BCCCD2019)の刺激文を用い、成人を対象とした実験を行った。結果、成人では呈示された相互に比較できそうな状況の場合にSome的な解釈が、比較しづらい場合にはAll的な解釈が行われやすいことが示唆された。この成果に関しては、国際会議JSLS2021で発表する予定である。R2年度の研究B「文構造とスカラー含意が発話意図推測にどのように寄与するのかを調べる。」の進捗に関しては、成人を対象とした予備実験を行った。「花があります」のような単文では、All的な解釈をしやすい可能性が示唆された。 以上のことから、alternativeが想定できない場合、some解釈が困難なことがわかった。これは、Yasuda and Kobayashiが報告した幼児を対象とした理解実験の結果と似ている。今後、A,Bを明らかにしていくことで、コミュニケーションにおける思考力についての知見が得られることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R2年度は、Covid-19の影響で対面での実験ができなかった。そのため、非対面でも可能な実験を行った。研究Aでは、実験刺激を検討し、成人を対象とした実験を行った。得られた知見は、国際会議で発表し議論を行うことを予定している。研究Bに関する予備実験を行った。当初、幼児に対しても実験を行う予定だったができなかったが、研究自体は進展しているために、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度は、基本的には対面実験を予定しているが、Covid-19の影響により対面実験が困難になることが予想される。そのため、Zoom等を用いた実験も研究計画に加えることを考えている。研究AとBに関しては、計画書通りに実験を行うと共に、これらの知見を支援するような他の実験も行い、論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響で、国際会議の中止や国際会議や学会の開催がヴァーチャル開催になったので、計上していた旅費は使用しなかった。現在、研究計画の一部を議論しており、スカラー含意のオンライン処理について調べることを検討している。よって、繰り越す予算は、この知見を調べるために使用する。
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