研究課題/領域番号 |
20K03378
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
矢藤 優子 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (20352784)
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研究分担者 |
肥後 克己 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (70795351)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オキシトシン / コルチゾール / 生理指標 / 母子関係 / 縦断研究 |
研究実績の概要 |
本研究では,「いばらきコホート」参加者のうち研究協力に同意を得た妊産婦に対して,妊娠25週から32週の間に1回,産後も継続的に,唾液調査(コルチゾール・オキシトシン濃度)を実施した。唾液検体中の各指標の濃度分析については,設備費ならびに技術面の質の保証の観点から,株式会社矢内原研究所へ外部委託している。2020年度は,産前39名分,産後1ヵ月時点で31名分,産後6ヵ月時点で32名分,12ヵ月時点で22名分の検体を回収した。 妊娠期の母親の唾液中コルチゾール濃度と産後の子どもの気質・社会性の関連について,予測適応反応応(predictive adaptive response)の観点から分析を行った。子どもの気質については母親による質問紙への回答,社会性については行動観察法を用いて「かかわり指標(安梅,矢藤ら(2007)による親子の社会的関係性の評価を行った。現在までの分析の結果,産後3ヵ月時点では妊娠期の母親の単位時間あたりのコルチゾール濃度が高いほど子どもの応答性(Responsiveness)が高いことがわかった。この結果については第38回日本生理心理学会大会において報告した。母親のオキシトシンの分泌量は,産後1ヵ月から6ヵ月にかけて有意に減少していた。また,オキシトシンの分泌量と行動観察により得られた産後1ヵ月の子どもの「主体性」,養育者の「子どもの社会情緒発達への配慮」に負の相関がみられた。オキシトシン濃度と母親の養育行動の関連については, 2021年度の日本心理学会において発表を予定している。 継時的に唾液採取や行動観察,質問紙調査を実施しているが,全ての時点のデータがそろっている調査協力者のデータのみを対象とするだけでは,適用できる分析方法が限られてしまう。そこで,縦断的な分析と横断的な分析を組み合わせた分析を実施し,日本発達心理学会第32回大会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルス感染症感染拡大により調査の一時中断を余儀なくされたものの,検体の授受方法の変更等の迅速な対応により,概ね計画通りに進めることができた。また,学会発表による成果報告も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,代表者が遂行する「いばらきコホート」の一環として行われていることから,豊富な質問票によるデータ(家族構成,婚姻形態,SES(職業,年収,学歴)などの基礎情報,PHQ-9(うつ尺度),妊産婦用QOL,ATQ・TCI(成人版気質検査),ソーシャル・サポートなど)や,行動観察データを分析に取り込むことが出来る。今後は,これらの変数と生理指標データとの関連について分析を進めるほか,継時的調査であるという強みを生かし,産後1ヵ月時点のオキシトシン濃度がその後の母子関係に及ぼす影響など,ある一時点のバイオマーカーの指標がその後の生活状況や母子関係にどのように関連しているのかについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が少額(500円)であったため,次年度使用額として執行することとした。
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