本課題では、性的アディクション患者における遅延価値割引傾向および時間的展望等といった認知的要因と不適応的性行動との関連を検討するものである。性的アディクションというのは、まだ正式な疾病概念ではないものの、性的行動に対するコントロールの喪失やそれに伴う不適応状態の生起を中心とする行動的アディクションだと考えられている。遅延価値割引傾向とは、目先の小さな価値を優先し、遅れて得られる大きな価値(遅延大報酬)を小さく見積もる認知傾向のことである。時間的展望とは、個人の現在、過去、未来に関する意識や態度、時間的な見通しのことをいう。 これらの認知傾向は、依存症に関する新たなリスクファクターとして、近年注目を集めており、これまでさまざまな依存症との関連が指摘されている。しかし、性的アディクションについても同様の傾向がみられるかどうかは、まだ明らかになっていない。したがって、価値選択課題を用いた質問紙および時間展望質問紙を用いて、性的依存行動との関連を調査した。さらに、パーソナリティ傾向として、サイコパシー傾向尺度を作成し、性的依存症との関連も調査した。 調査は、性的依存症者を治療する病院、自助グループの協力を得てデータを収集し、性的依存症とこれらの要因との関連を分析した。 サイコパシー傾向尺度に関する論文は、投稿が完了し、査読コメントをもとに現在修正中である。認知的要因との関連についての論文はほぼ完成し、投稿準備中である。また、性的アディクションに関しては、臨床医向けの医学書「講座精神疾患の臨床8 物質使用賞又は嗜癖行動症群、性別付合」を分担編集、執筆を行った。
|