昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大の影響のため、文献調査を通して日本の独自性を掘り起こすこと、さらに日本において「精神分析史」という研究分野を定着させることを目的として研究をおこなった。 その中では、昨年に続き、第二回「精神分析史と人文科学」シンポジウムを2022年9月19日に開催した。シンポジウムにおいては、「精神分析史の多様性」をテーマとし、千葉雅也教授のご講演『創造的なものとしての神経症あるいは神経質:精神分析、ドゥルーズ、森田正馬』が実施され、また、シンポジウム(司会:西 見奈子)では、シンポジストには上尾真道准教授、鈴木菜実子准教授、ニコラ・タジャン准教授、指定討論には池田暁史教授、遠藤不比人教授といった日本での代表的な精神分析史の研究者たちを招致し、「精神分析史の多様性」をテーマに多くの参加者を集めた。さらに「精神分析史と人文科学」シンポジウムのHPでは遠藤不比人教授と藤井あゆみ講師による対談のテキスト公開や動画配信などもおこない、精神分析史の啓蒙に努めた。 また、日本の精神分析の特徴を探索的に検討することを目的に松木邦裕名誉教授との西平直名誉教授の対談、講演を企画し、2022年7月31日に実施した。 さらに当初の予定からは、大幅に減じることになったが、最終年度には古澤平作の遺品調査を部分的に再開することが可能となった。そこで3名の患者についての手紙や通信分析の記録等の資料を精査検討し、第一回日本精神分析史研究会で戦後の日本の精神分析の実際について発表をおこなった。
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