研究課題/領域番号 |
20K03394
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
本谷 亮 北海道医療大学, 心理科学部, 准教授 (20584189)
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研究分担者 |
丹羽 真一 福島県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (30110703)
笠原 諭 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (30773056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性疼痛 / 認知行動療法 / リハビリテーション / 臨床心理学 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、昨年度に引き続き、開発した理学療法士による慢性疼痛患者に対する認知行動療法プログラムであるCBTR-CP(Cognitive Behavioral Therapy Rehabilitation for Chronic pain)のpilot studyにおける短期的効果について、英文誌採択へ向けた準備を進めた。改善効果が示されているものの、解析対象の患者が11名で、かつ対照群も未設定であることに対する限界や本邦の実情をふまえた臨床的意義について、同様の先行研究や臨床報告での知見を交えてDiscussionsでの考察を再検討した。また、個々の事例における患者背景や特徴を精査し、動機づけの向上や生活改善に有用で、理学療法士が実施可能なプログラム要素を検討した。その結果、CBTR-CPにおいては、特に患者のセルフモニタリング行動や健康行動の記録を理学療法士がグラフを指し、視覚的に強化すること、2)活動の動機を明確にする生活目標シートを用いて、患者が日ごろ大切にしている価値観を引き出し、患者自身に語らせること、が動機づけに寄与し、患者の破局的思考や生活障害の改善につながっていることが示唆された。 また、pilot studyで想定していた改善がみられなかった行動活性化の項目についての妨害要因を検討するために、慢性疼痛患者を対象として重要な他者からの痛みに対する反応が行動活性化にどのような影響を与えているかを調査した。その結果、「気をそらせる反応」が患者の行動を活性化することが明らかとなった。一方で、「否定的な反応」や「気遣いする反応」は患者の行動活性化に対して肯定的にも、否定的にも影響を及ぼさないことが示された。したがって、患者の行動を検討する際には、患者にとっての重要な他者の関わりも考慮する必要があると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
一昨年度、昨年度に続く新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当初予定していた対象者の確保、およびプログラムの実施(研究実施の臨床病院の確保)が困難であった。そのため、想定していた十分な統計学的解析などが難しい状況であった。従って、進捗としては遅れている状況と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究協力機関にてプログラム対象者のリクルートとプログラム実施を依頼し、pilot studyを継続して行う。また、対照群の確保や長期的効果の検証 を実施予定である。加えて、対象者を増やす中で、non-responderの特徴も明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 一昨年度、昨年度同様、新型コロナウイルス感染拡大により、想定していたプログラムの対象者が集まらず、最終的な解析対象者数も限られており、十分なデータ解析が行えなかったため。また、同感染拡大により、出張を伴う(対面実施による)学会参加・発表、研究協力者への対応などがなく少なかったため。 (使用計画) 適切なデータ解析の実行にあたり必要な解析ソフトの購入、あるいは統計の専門家からの専門的知識の提供に伴う謝金支出、学術雑誌への投稿料・掲載料、およびプログラム実施者である理学療法士への教育体制整備(プログラムやその機能的運用にかかるレクチャーや課題の抽出に関する現地訪問)における出張費として支出予定である。
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