研究課題/領域番号 |
20K03395
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研究機関 | 仙台白百合女子大学 |
研究代表者 |
中嶋 みどり 仙台白百合女子大学, 人間学部, 准教授 (10412339)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 原爆被害者の一生 / 心の支え / 証言者 / 伝承 |
研究実績の概要 |
本研究は、被爆地を離れて生活している原爆被害者を対象とし、その一生や大切に思ってきたこと、活動中の人は現在している活動の意義、戦争を知らない世代に伝えたいことを検討することにある。昨年度までの報告では、被爆地以外で活動している被爆者に共通していたのは、戦争を知らない世代にどのように伝えていけばいいか、工夫を色々行っていることが、大切な意義であることが示された点である。この点を複数県の被爆者に尋ねるため、面談調査予定の方に少々尋ねたところ、「情緒的に訴えるのでは意味がない」「科学的に伝えたり、自分事に伝わるように苦慮している」とのことも挙がってきた。次年度は、この点について、文献研究やHPや動画の活動などから、多様性を事前学習しながら、様々な試みを明らかにするとともに、実際に行っている出張授業などをお尋ねすべく、面談調査に行く予定である。 また、被爆地で長年生活してこなかった被爆者の心の支えの視点では、自身が被爆者であることを長年隠した人が多く、高齢期に入る第二の人生として活動を契機に話し出した人が大半で、転居してすぐ被爆者であると伝えたり、伝承活動をしている人は少数であった。この点の理由や個人差について、今年度は検討を進める予定である。先行研究では、被爆者であることを隠す理由について、差別を避けて生活するためや、思い出したくないし、トラウマの再体験を避けるため、言っても伝わらないことを言う意味がないなどが挙げられている。しかし、言わないことで、差別を避け、結婚や就職に難がなくても、内面は孤独であり、子どもの出産で不安という面も先行研究で上げられていることから、一生を改めて尋ねることで、そのような内面に迫り、話さなかったことは被爆地以外で生活するに合理的だったかの示唆を得て、災害等を体験し、さらにやむなく転居された人の一生に今後、活用できる知見を得たい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度もコロナ禍でなければ、もっと多くの県に移動し進められたという点では、進み方が良いとも言えない。しかしながら、文献研究やHP等に掲載されている様々な団体や新聞社の活動記録などのデータは、有益であり、その点での検討はできたために、順調としている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、コロナ禍にある点を考慮しながら、今年度は被爆地以外の被爆者に接する機会を多く持ちたい。被爆者は高齢であるため、時間がないが、健康状態等に問題ない人、団体で活動している人が主になると想定されるが、被爆地を離れてからの一生に焦点を当て、被爆者であることを隠してきたか、隠すことで得られた内面の安定や不安などに焦点を当てたい。 また、ご自身の活動についての意義や伝えたいこと、伝承の工夫などを、実際どのようにしているのかを教えていただき、何を大切にしているかを検討し、明確にしていきたい。 また、離れてから被爆地のことをどう思ってきたかは、あまり自発的に語られないため、この点も尋ねながら、被爆体験、被爆地と一生のあり方に関する知見を得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画時には、国際学会発表を予定していたために、予算枠を大きく見積もっていた。しかし、コロナ禍において、学会開催が1年延期となったこと、また国際学会のための出張が困難な状態になっているために、予算を執行しにくいために繰り越した。 この予算については、国内で被爆地以外の被爆者や被爆の伝承活動に関する調査のための出張予算に充当し、研究に活用したい。
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