研究課題/領域番号 |
20K03401
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
吉住 隆弘 中部大学, 人文学部, 教授 (60535102)
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研究分担者 |
加藤 弘通 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20399231)
飯田 昭人 北翔大学, 教育文化学部, 准教授 (60453289)
畠垣 智恵 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (60436988)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 子どもの貧困 / 学校との連携・協働 / チーム学校 |
研究実績の概要 |
課題研究「教員の貧困認識の特性と支援における困難感の検討」について,未分析であった調査対象者を追加し,315名の教員の再分析を行った。結果,小学校教員は,子どもの学習面,生活面,対人面の問題を多く認識し,衣食や学習に関する支援を多く経験していること,中学校教員は,スクール・ソーシャルワーカーや福祉事務所との連携・協働を多く経験していること,高校教員は,子どもの問題理解の認識の程度が全般的に低く,支援経験も少ないということが分かった。加えて勤続年数が長いほど,親の学校への関与の希薄さを認識し,生活保護や就学援助といった福祉制度と関連する支援を多く経験していたことが明らかとなった。 次に課題研究の「貧困が子どもの発達に与える影響の実証的検討」について,学習サポート事業に参加する生活困窮世帯の中学生321名と,保護者238名を対象に質問紙調査を行った。その結果,9割の中学生が本事業に参加して,自分自身に肯定的な変化が生じていることが明らかになった。またその変化には,勉強の面白さが関係しており,学習支援が生徒の肯定的な変化に繋がっていることが明らかになった。また低学年では,大学生の学習支援サポーターとの関係が自己の成長と関連しており,高学年では,将来の夢を考えるようになることが自己の成長と関連していた。保護者は,本事業を通して子どもに変化が生じていることを認めつつも,学習に対する不安も高いことが明らかになった。次に新型コロナウイルスは,大学生にも深刻な影響を与えていると考え,急遽,大学生を対象とした調査も実施した。大学生約900名を対象に,新型コロナウイルスによる経済的影響,遠隔授業環境,精神的健康の関連を調べた。結果,経済的負担感とオンデマンド型授業に対する負担感の高い学生は,うつや不安の得点でカットオフ値を超える傾向にあり,精神的健康の側面への支援の必要性を示唆する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響により,課題研究の「学校内でのチーム支援の検討」や「学校が地域の社会資源とつながるための仕組みの検討」については,団体・組織への調査が難しく実施できなかった。海外での視察調査も同様の状況だが,フィンランドについては,文献調査として,社会保険庁KELAや健康福祉研究所THLのwebサイトを参考に,フィンランドのCovid-19感染拡大下および都市ロックダウン時における家族,妊産婦,学生を対象とした社会的支援,心理的支援に関する情報を収集した。
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今後の研究の推進方策 |
「教員の貧困認識の特性と支援における困難感の検討」,「学校内でのチーム支援の検討」,「学校が地域の社会資源とつながるための仕組みの検討」については,現状,新型コロナウイルスの影響により,中学校や高校や地域で活動している諸団体を対象とした質問紙調査やインタビュー調査,およびフィンランドでの視察調査を行える段階にはなっていない。状況の改善を見据えながら,調査や視察の可否を検討する。一方,「貧困が子どもの発達に与える影響の実証的検討」については,2021年も引き続き,さっぽろ青少年女性活動協会と共同で,学習支援事業において,質問紙調査を実施する予定である。それにより,今年度見られた特徴が,今年度特有の特徴なのか,年度に寄らず一貫してみられる特徴なのかを検討し,効果的な学習支援事業の在り方について検討する。また精神疾患(統合失調症,うつ病)のある親をもつ大学生および大学院生を対象に,小学校から高校までの年代を回想してもらうインタビュー調査を実施する予定である。養育者および相談相手としての親との関係や家庭生活の様子,経済状況などについて尋ね,それらが進路選択の過程や相談相手との関係にどのような影響を与えているかについて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,当初予定していた中学校や高校や地域で活動している諸団体を対象とした質問紙調査やインタビュー調査が実施できなかったためである。状況の改善を見据えながら,調査や視察の可否を検討する。
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