研究課題/領域番号 |
20K03402
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
田中 史子 京都先端科学大学, 人文学部, 教授 (00632788)
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研究分担者 |
大山 泰宏 放送大学, 教養学部, 教授 (00293936)
清水 亜紀子 京都文教大学, 臨床心理学部, 講師 (30509352)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性疾患 / 高齢化 / 心理的支援 / 糖尿病 / がん / HIV/AIDS |
研究実績の概要 |
糖尿病班は,島根県の病院において3名に対して面接調査をおこない,ミーティングで事例検討をおこなった。その結果,当事者が,自身の将来や高齢化社会の到来に対して,漠然とした印象を持っていること,医療者とのあいだで傾聴されるという経験を持っている当事者は調査などの場でも自分の感情や経験を語ることに逡巡が少ないこと,将来的にこのままではいられないという意識は持ちながらも,無意識的に今の状態が続くようかのように思っていることなどを知ることができた。また,心理職3名の面接調査結果を日本心理臨床学会においてポスター発表した。その中で,高齢化する慢性疾患当事者は,疾患と高齢化に共通する問題(身体機能やQOLの低下/抑うつ/喪失感/自身の状態との折り合い/スティグマや偏見など)を二重に背負うことについて論じた。 がん班は,これまで調査した27名の事例検討をおこない,その結果を箱庭療法学会での口頭発表で報告した。その発表をふまえて,投稿論文を作成した(未投稿)。また,医療者への面接調査を開始し,6名終了した。 HIV班は,コロナ感染がおさまらない状況の中で,本年度は,次年度からの研究実行のための組織構成をおこなった。その結果,本研究に関して大阪医療センターの臨床心理士の協力を得ることが確定し,具体的な研究班の組織について策定をおこなった。 本研究全体の今年度の調査から,がん当事者の高齢化についての語りからは,彼らがそのことを社会問題として語り,個人の老後ということについては考えるのを避ける傾向がうかがわれたこと,一方で,糖尿病当事者のほうは,自分個人の将来の心配ごとについて語られるが,無意識的にはどこか今の状態がこのまま続くかのように思っていることなどの結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の感染拡大の影響を受け,調査協力をお願いできる医療機関が少なかったことが理由として挙げられる。慢性疾患,特に糖尿病やHIV/AIDSなど,感染すると重症化するリスクが高い疾患を持つ当事者を対象としているため,調査が計画されても,感染拡大状況により延期が繰り返されるということもあった。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の5類への移行に伴い,今後は調査の受け入れが進むと思われる。現在,糖尿病班は大阪市立総合医療センター・十三市民病院・京都府立医大で受け入れを検討していただいている。また,HIV班は,国立病院機構大阪医療センターでの調査を検討している。今年度,当事者と医療者への調査を終わらせられると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により,調査ができなかったため,これまで調査に使う物品の購入や対象者への謝礼金のための予算を使わなかった。次年度は,調査が進むと考えられ,調査のための物品の購入・謝礼として助成金を使用する計画である。
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