研究課題/領域番号 |
20K03403
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
駿地 眞由美 追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (10388217)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乳がんサバイバー / PTG / ボディイメージ / 心理的well-being / 病の体験 |
研究実績の概要 |
2021年度の主な研究成果は以下のとおりであった。 ①乳がんサバイバーのPTGとボディイメージに関わる要因として、「出来事の中心性(Berntsen & Rubin,2006)」に着目し、乳がんサバイバー500名を対象としたWeb調査を実施した。結果、乳がんという病の体験やその意味を自分の中で問い、自分の人生やアイデンティティにとって重要なものであると認識していくことは、乳がん罹患後のポジティブな心理的変化の認知や、肯定的なボディイメージに関連していることが明らかとなった。 ②乳がんサバイバーの身体との関係および心理的well-beingに着目し、がん罹患経験のない女性との比較検討によって、乳がんという病の体験へのアプローチを試みた。調査対象者は、女性乳がんサバイバー300名、がん罹患経験のない女性300名であった。結果、乳がんという病の体験は、特に若年層で身体への違和を生じさせ、アイデンティティの発達を阻害する可能性がある一方、身体レベルからも大きく揺さぶられ、生き方の見直しが行われる中年期においては、乳がんという病に向き合うことがその保護因子や成長促進因子になる可能性があることも示唆され、女性のライフサイクルの中で乳がんという病の体験を理解する必要性が示された。また、自身の身体を安定して受け入れられることが心理的well-beingを高める上で重要であるなど、援助のための手掛かりも得られた。 ③COVID-19パンデミック状況下の一般集団およびがん患者の精神的健康について、150本以上の海外論文を引用し、検討した。結果、がん患者は、がんとCOVID-19パンデミックという二重の文脈で心理的苦痛を抱え、複合的、相乗的な影響を受けていることが懸念される一方、がんによる経験が、COVID-19パンデミックにうまく対応できるためのリソースとなっている可能性があることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍における研究対象者(女性乳がんサバイバー)の心理的・身体的負担を考慮し、また、倫理的配慮を行った結果、研究開始当初に計画していた面接調査は中止せざるを得なかったが、研究目的に沿う形で研究計画や研究方法を再考し、研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
女性乳がんサバイバーのPTGに関わる要因や、PTGの生起プロセスを捉えるため、現在、2回のパネル調査を実施中である。2021年度にすでに1回目の調査を終えており、2022年度に2回目の調査を実施する予定である。 これに加え、乳がん以外の身体疾患に罹患している方への調査も行うことで、乳がんという病の体験の個別性や、そこで生じるPTGの相違を検討することも計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において、対象者(女性乳がんサバイバー)に対する心理的・身体的・倫理的配慮を行った結果、当初計画していた面接調査を実施することができなかった。よって、そのために計上していた予算を使用することができず、当該助成金が生じた。また、学会発表のために計上していた旅費が、コロナ禍で学会がオンライン開催になったことにより、必要なくなった。 次年度は、複数回のWeb調査の実施を計画しており、次年度助成金に当該助成金を合わせて、かかる費用に充てる予定である。
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