研究課題/領域番号 |
20K03408
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
本田 真大 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40579140)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 援助要請に焦点を当てたカウンセリング / 被援助志向性 / 尺度開発 / 認知行動療法 / 発達臨床心理学 / COSMIN |
研究実績の概要 |
当該年度の研究3は,COSMINに基づいた尺度開発を継続することであった。前年度の研究2ではPROM開発研究を計画し内容的妥当性の高い2つの尺度(援助要請認知,援助要請スキル)を作成した。 今年度は4つの研究を行い,尺度の信頼性,妥当性,反応性を検証した。研究3-1では構造的妥当性,内的一貫性,再検査信頼性,測定誤差,反応性を検証した。小中高校生合計831名に3回の縦断調査を実施した結果,理論通りの因子構造が得られ構造的妥当性が支持された。また,高い内的一貫性,一定程度の再検査信頼性が得られた。測定誤差は標準誤差(standard error of measurement; SEM),最小可検変化量(minimal detectable change; MDC)が算出され,測定誤差を超える得点変化の範囲が示された。反応性は最小重要変化量(minimal important change; MIC)を算出する計画であったが,アンカー項目と得点変化量の相関が低く,本研究のデータでは得点変化量を分析にできなかった。 研究3-2(小中高校生合計1443名),研究3-3(小中高校生合計982名),研究3-4(小中高校生合計1060名)では構成概念妥当性の仮説検証を行った。分析の結果,援助要請認知尺度では仮説45個中の37個(82.2%),援助要請スキル尺度は仮説16個中の14個(87.5%)が支持されたため,構成概念妥当性は十分に高いと判断された。 以上より,当該年度の4つの研究より尺度の信頼性,妥当性が支持された。反応性を十分検討できなかった点,オンライン調査でデータ収集,分析した高校生の尺度の測定誤差が若干低い点(研究へのバイアスのリスクが小中学生のデータよりも高かったためと考えられる点)が本研究の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症によって学校でのデータ収集と介入研究の実施が難しくなったために,前年度の研究より当初の研究計画から変更をしているが,変更した結果,合計7つの質的研究及び量的研究を実施したことで,当初の研究計画以上に質の高い尺度を開発することができている。 質の高い尺度開発を行うことで将来的に介入研究で本尺度を使用して尺度の反応性を検討したり,介入プログラムの効果を厳密に比較検討したりできる点で,今年度までの研究で価値の高い研究成果を得ることができたと言える。そのため,研究全体としては順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究により,COSMINに基づいて信頼性と妥当性の高い尺度が開発できている。一方で課題としては,高校生に尺度を適用する場合の測定誤差を再検証すること,小学生,中学生,高校生に尺度を適用する場合の反応性を検証することである。 当初の3年目の研究計画ではオンライン調査(開発した尺度を用いて本田他(2015)の援助要請行動から適応感に至るプロセスモデルを検証する)を実施して介入モデルを作成し,4年目に介入研究を行う予定であったが,上述の通り3年目の研究計画を変更し尺度の質を高めるための研究を追加している。また,4年目(2023年度)の研究に向けた各学校との調整では,新型コロナウイルス感染症の流行前の程度の介入研究はまだ実施できない見込みである。 最終年度である4年目の研究では,3年目に計画変更したように,当初の研究計画を遂行・完了すること自体を目的とするのではなく,本研究の成果として質の高い研究を行うこと,すなわち援助要請認知,援助要請スキルの質の高い尺度開発を行うことをめざす。そこで,今年度の研究では尺度開発において課題となった高校生の尺度の測定誤差の再検証,あるいは小学生,中学生,高校生の尺度の反応性の再検証を実施する予定である。
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