日常生活での継続性・普及性を有する抑うつ一次予防の実証研究

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 20K03409
• 研究機関: 宇都宮大学
• 研究代表者: 白石 智子 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 准教授 (00453994)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 抑うつ予防 / 健康心理学・健康開発 / 心理的介入

研究実績の概要

抑うつ予防の重要性が指摘され久しいが，症状やリスクファクターの有無等によって対象を限定しないユニバーサルタイプの発症予防では，「現時点では困ってない」者が対象者の大半を占めるため，予防プログラム参加におけるモチベーションの喚起・維持および負担感をどう減らすかが常に課題となっている。本研究では，抑うつの好発期にあたる若年層（大学生）への予防的介入の効果的・拡大的運用を目指すにあたり，対象者にとって身近な存在であるマンガを媒体とした「日常的な読書」の効果に着目・活用した普及性の高い抑うつ予防法の開発・効果検証を行う。
当該年度は，マンガ読書により得る心理的効果およびその効果に関わるテーマやシーンを把握することを目的とした，大学生による自由記述をメインとしたWeb調査を実施し，質的分析対象となるデータを収集した。大学生が「マンガから学んだこと」といった自己形成・自己成長に関わる教育的側面について検討された先行研究はあるが，本研究では，そのような意義に限らず，幅広く心理的効果を把握するため，一般的には比較的肯定的に評価されないようなものであっても，調査対象者自身がポジティブに捉えている心理的効果について自由に記述を求めている。自由記述の分析については次年度に実施するものであるが，調査対象者の約98%がマンガ読書経験をもっていることから，現在の大学生にとってもマンガは身近な媒体であることが改めて示されている。また，マンガ読書経験をもつ者の約97%が，マンガから何らかのポジティブな効果を得ていることも示された。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究課題において当該年度に予定されていた調査は，大学生に対し，大学生活の中で協力依頼をするものであった。しかしながら，新型コロナウイルス感染症の拡大，およびその対策等を受け，本研究の対象者である大学生も修学・生活において多大な影響を受けた。そのため，ある程度オンライン授業等への対応が進んだ当該年度の後半より調査を開始したため，結果の質的分析は次年度に行うこととなった。

今後の研究の推進方策

次年度については，次の2点を中心に研究を遂行し，介入プログラムの開発に繋げる予定ある。
１．当該年度に実施した調査データについて質的分析を行い，抑うつ予防効果が見込まれるテーマやシーンを抽出する，２．抽出したテーマやストーリーを含むマンガを日常的読書に取り入れる傾向やその取り入れ方の違いが，実際の心理的適応度にどのように関係しているかについての調査を実施，量的分析を行う。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症予防対応のため，予定していた国内出張を取りやめ，出張旅費の支出がなかった。国内出張は，社会状況をみながら，可能になり次第実施する予定である。
当該年度の調査の開始時期を，対象の状況に応じて遅らせたこと，また，感染症対策上の観点から，自由記述データの入力補助は次年度に実施することとし，そのための謝金も次年度の支出を予定している。