研究課題/領域番号 |
20K03409
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
白石 智子 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 准教授 (00453994)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 抑うつ予防 / 健康心理学・健康開発 / 心理的介入 |
研究実績の概要 |
本研究では,抑うつの好発期にあたる若年層への予防的介入の効果的・拡大的運用を目指すにあたり,大学生を対象として,ストーリー・マンガを媒体とする「日常的な読書」を介した抑うつ予防法の開発・効果検証を行う。 当該年度については,(昨年度の調査結果を基に抽出した)予防効果が見込まれるテーマやストーリを含むマンガを日常的読書に取り入れる傾向やその取り入れ方の違いが,日々のネガティブ・ポジティブな出来事経験との関係を通した抑うつの程度とどのように関係しているかについて,調査・分析を行った。 現在マンガ読書を行っている大学生の量的データを分析対象とした。まずマンガ読書そのものの頻度について有意な性差がないこと,また,読書頻度によって日々のネガティブ・ポジティブな出来事経験頻度および抑うつの程度に有意差がないことを確認した。予防効果が見込まれる内容を含むマンガの読書頻度と抑うつの程度との関係については,全般的に非抑うつ群よりも高抑うつ群の方が抑うつ予防関連内容を含むマンガ読書の頻度が高いことが示された。一時点での調査であることから因果関係を示すものではないが,抑うつ程度が高い状態でも抑うつ予防関連マンガ読書行動が生起していることは示された。マンガ読書の取り入れ方(どのようにマンガを読んでいるか)と抑うつ程度との関係については,高抑うつ群の方が,集中,自己対峙,気分調節に関する取り入れ方が多いことが示された。日々のネガティブ・ポジティブな出来事との関係を含めた分析結果では,特に自己に対するポジティブな出来事の経験頻度が高い群は抑うつ予防関連内容を含むマンガ読書頻度が高いことが示された。一方で,自己に対するネガティブな出来事の経験頻度が高い群は,低い群よりも効果的・依存的両方のマンガ読書の取り入れが多いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度については、予防効果が見込まれるテーマやストーリーを含むマンガを日常的読書に取り入れる傾向やその取り入れ方の違いが,実際の心理的適応度にどのように関係しているかについて調査・分析し,抑うつ予防効果を高めることが期待されるマンガ読書の取り入れ方を検討した。マンガ読書は「気晴らし」として利用されることも多いが,気晴らしには,適用の仕方によって依存的側面があることも指摘されており,マンガ読書の効果的な取り入れ方について検討が必要がためである。分析の結果,抑うつの程度の高さと抑うつ予防効果が見込まれる内容を含むマンガ読書頻度とに正の関係があること,また高抑うつ群において効果的・依存的両方のマンガ読書の取り入れ方が見られたことから,予防プログラム開発に向けて更なる検討を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
先述の通り,当該年度については,(昨年度の調査結果を基に抽出した)予防効果が見込まれるテーマやストーリを含むマンガを日常的読書に取り入れる傾向やその取り入れ方の違いが,日々のネガティブ・ポジティブな出来事経験との関係を通した抑うつの程度とどのように関係しているかについて,調査・分析を行った。分析の結果,予防プログラムの開発に向け更なる検討を必要とするため,ネガティブ・ポジティブな出来事を経験した際のマンガ読書を日常に取り入れる程度および取り入れ方の違い等についての調査を追加すること,さらに,抑うつ関連認知についても変数に加え,検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査をオンラインで実施したため,データ入力補助者への謝金が発生しなかった。一方で,データ整理・分析について時間を要したことに加え,コロナ禍の影響もあり学会出張旅費が発生しなかった。次年度については,複数の追加調査について,当該年度同様オンライン調査会社のモニターへ依頼するため,その経費として使用する。
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