研究課題/領域番号 |
20K03416
|
研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
葛西 真記子 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (70294733)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | セクシュアルマイノリティ / LGBTQ+ / 研修プログラム / ガイドライン / 倫理規定 / 性の多様性 / カウンセラー / 心理支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、LGBTQ+の理解を促進、適切な支援が行われるような研修プログラムを開発することと、対応の倫理規定とガイドラインを作成することである。 これまでLGBTQ+(セクシュアル・マイノリティ)に関する社会の理解を促進するための取り組み(研修、講演、書籍等)は行われ来たが、当事者への有効な心理 的支援の在り方、その方法、研修方法、指導方法に関する研究はほとんど皆無であった。 本研究では、①「心理支援の専門家のためのLGBTQ+研修プログラム」の開発とその効果の検証、また、②臨床実践や研究活動の基礎となる倫理規定やガイドラインの作成を試みるのである。そして、①②の目的に関して海外の実践を参考に、また日本国内の当事者の方々からのインタビュー内容を参考に案を作成し、その有効性を実証する。 ①の目的に関しては、本年度はプログラムを初心者向け、中級者向け、また教員対象のものも幼小向け、中高向けと内容を変更したものを作成した。特に初心者向けのプログラムについては、オンラインでの実施であっても、対面での実施と効果にあまり違いがみられなかったが、中級者向けのプログラムでは、実際の対応方法等についてグループでのディスカッションも含まれているため、オンラインでの効果は対面のものよりも低いことが明らかとなった。また、アジアを中心とした海外の研究者や実践家との情報交換に基づいた資料の作成を行った。 ②の目的に関しては、令和2年に作成した大学のガイドラインの周知徹底を行うために学内での教職員対象の研修会や学生対象の研修会を開催した。その結果、当事者の学生から学内での受け入れが以前より良くなったと感じられ、過ごしやすくなったとの反応を得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度に実施できなかったプログラムをオンラインと対面とで実施することができた。その結果のデータを収取し、分析している。その結果、対象によって実施の方法を変える必要があることが明らかとなった。これについてさらに研究を進めていく予定である。 また、海外の研究者や実践家との情報交換から、オンラインディスカッションセミナーを予定通り開催した。タイ、中国、インド、韓国からの実践内容の紹介をしてもらい、他のアジア圏の国からの討論を行った。アジア圏の情報が世界的には不足しているので、貴重な体験であり世界各国からの参加があった。 研究をさらにすすめるためには、海外での研究発表や海外のガイドラインや倫理規定等についての情報収集をおこなうための海外研究会参加が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
目的①については、これまで収集したデータを分析し、国内外の学会等で発表する。また、初心者むけのオンライン研修動画の撮影を行う。動画視聴後の感想等についてもデータを収集する。また、だれでも実施できるようなプログラムにするために実施マニュアルの作成にも着手する予定である。 目的②については、ガイドラインの実際の運用の中で修正が必要な部分、追加が必要な部分について検討する。また次に倫理規定を作成する予定であるため、国内外の学会、様々な機関、大学等から資料を集め、検討する。これについては、令和3年度に共同でオンラインディスカッションセミナーを行ったタイ、中国、インド、韓国、新たに、台湾、香港、マレーシア等も含めたアジアの諸地域の研究者や実践家と連携し、それぞれの地域での倫理規定やガイドラインの情報も収集し、比較検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額となったのは主に「旅費」である。また「旅費」に関連した「その他」の支出である。今年度での実施が難しく、次年度への繰り越しとなった理由は、当該年度に行った研究のために情報収集を行ったり、学会、研究会等での発表を行う予定だったが、新型コロナウィルス感染症のために移動が制限され、情報収集はオンラインで行ったが、現地視察はできなかったからである。
|