本研究の目的は、LGBTQ+の理解を促進、適切な支援が行われるような研修プログラムを開発することと、対応の倫理規定とガイドラインを作成することである。 これまでLGBTQ+(セクシュアル・マイノリティ)に関する社会の理解を促進するための取り組み(研修、講演、書籍等)は行われてきたが、当事者への有効な心理的支援の在り方、その方法、研修方法、指導方法に関する研究はほとんど皆無であった。 本研究では、①「心理支援の専門家のためのLGBTQ+研修プログラム」の開発とその効果の検証、また、②臨床実践や研究活動の基礎となる倫理規定やガイドラインの作成を試みるのである。そして、①②の目的に関して海外の実践を参考に、また日本国内の当事者の方々からのインタビュー内容を参考に案を作成し、その有効性を実証した。 ①の目的に関しては、初心者、中級者、また教員対象のプログラムなど、対象に応じてその内容を変更したもの、また当事者についても幼小向け、中高向けと内容を変更したものを作成した。特に初心者向けのプログラムについては、オンラインでの実施であっても、対面での実施と効果にあまり違いがみられなかったが、中級者向けのプログラムでは、実際の対応方法等についてグループでのディスカッションも含まれているため、オンラインでの効果は対面のものよりも低いことが明らかとなった。 ②の目的に関しては、令和2年に作成した大学のガイドラインの周知徹底を行うために学内での教職員対象の研修会や学生対象の研修会を開催した。その結果、当事者の学生から学内での受け入れが以前より良くなったと感じられ、過ごしやすくなったとの反応を得られた。また、LGBTQ+の研究に関するガイドラインの作成にも取り組み、欧米のガイドラインを参考に学会においてその必要性を発表した。
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