研究課題/領域番号 |
20K03426
|
研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
岩原 昭彦 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (30353014)
|
研究分担者 |
藤原 和美 東邦大学, 看護学部, 教授 (50413414)
八田 武志 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 教授 (80030469)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ポジティブ心理学 / 認知機能 / 認知症予防 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
社会的つながりの程度が高い高齢者やポジティブ心理学的特性を持った高齢者の認知機能が維持されることが、昨今の疫学研究により明らかにされつつある。本研究では、長期縦断研究の枠組みのもとで、認知機能と心理社会的な要因との関連性を検証することで、社会的つながりやポジティブ心理学的要因が認知機能の低下を防止したり、認知症の発症を予防したりする仕組みについてモデル化することを目的とする。 医学的変数を考慮したうえで、認知機能と心理社会的要因との関連性を長期縦断研究という枠組みの中で検討することで、上述したような問題を明らかにすることを計画している。本年度はこれまでに実施してきた地域住民を対象としたコホート研究のデータをもとに、ポジティブ心理学的変数と認知機能との関連性およびポジティブ心理学的変数と医学的データとの関連性を検証した。主観的幸福感、人生の意味、素因的楽観姓、バイタリティ特性といったポジティブ心理学変数のうち、素因的楽観性と人生の意味とが認知機能と関連していた。 改訂版楽観性尺度によって測定された素因的楽観性特性に基づいて、対象者を楽観性高群、中群、低群の3群に分割し、認知機能検査の得点が群間で異なるのかを分散分析によって検証した。注意機能を測定するD-CAT1において、楽観性低群が中群や高群よりも遂行成績が低くなることが明らかとなった。また、文字流暢性検査および意味流暢性検査において、楽観性低群の遂行成績が楽観性高群よりも低くなることが明らかとなった。文字流暢性検査や意味流暢性検査の結果は、Gawronski et al.(2017)の楽観性が増加すると認知機能障害のリスクが単調に減少するという報告と一致している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は新型コロナウィルス感染症の蔓延があり、予定されていた住民健診が中止となった。本研究の目的である、社会的つながりとポジティブ心理学的要因が認知機能の低下防止にどのように関わっているのかについての関連検証研究を実施する予定が次年度に延期されてしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症が蔓延したためにコホート研究が中断している。既存の資料を活用して、ポジティブ心理学的変数と認知機能との関連性に迫るようにはしているが、新たな変数を追加して関連性を検証することが必要である。次年年度以降に再開される住民健診において当初に計画していた関連検証研究を実現する。研究分担者と共に新たなコホートフィールドを構築する準備を進めている。新たなコホートフィールドにおいても、ポジティブ心理学的変数と認知機能との関連性を検証するデータを収集する予定である。また同時に、当初の計画にはなかったオンライン調査を実施して、両者の関連性の検証を多角的に行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症で計画していた住民健診が中止になったため。新たなコホートフィールドを構築し、計画していたデータを収集することを目的として使用する。
|