研究課題
本研究の目的は、①高齢者の社会的つながりの高さと認知機能の維持とが関連する背景にはポジティブ心理学的要因が関与しているのかを明らかにする。関与しているとすれば、②何を心理学的な指標として取り出して活用すれば認知機能の低下防止や認知症の発症予防に効果的であるのかを明らかにすることであった。ポジティブ心理学的指標として、素因的楽観性、人生の意味、加齢の自己知覚を用いた。加齢の自己知覚については、Levy et al.(2004)が開発した加齢イメージ尺度の日本語版を作成した。社会的つながりの評価には日本語版 Lubben Social Network Scale 短縮版 (栗本他, 2011) を使用した。住民健診に参加した高齢者168名(男性76名、女性92名;平均年齢72.88±5.88歳)に対して、上述したポジティブ心理学的指標と社会的つながりについて調査するとともに、認知機能検査(NU-CAB)を実施した。認知機能検査の得点を目的変数、ポジティブ心理学要因および社会的つながり要因を説明変数、性別、年齢、教育歴を調整変数とした重回帰分析を実施したところ、友人や家族とのつながりの量的な程度が前頭葉機能と関連することが明らかとなった。また、ポジティブ心理学的要因と社会的つながり要因との交互作用項を投入した階層的重回帰分析を行ったところ、言語流暢性検査得点を目的変数とした解析で交互作用項が有意になることが明らかとなった。過去の認知機能検査の成績の軌跡と社会的つながり要因およびポジティブ心理学的要因との関連性を後ろ向き研究として解析したが、有意な関連性は認められなかった。本研究からは、社会的つながりの程度が高くなるとに認知機能を維持すること、特に、人生の意味を保有してない高齢者は友人とのつながりが高くなると認知機能が高くなることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
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