研究課題/領域番号 |
20K03427
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
三田村 仰 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (20709563)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 親への移行期 / カップルセラピー / 夫婦関係満足感 |
研究実績の概要 |
「親への移行期」に伴う夫婦の葛藤について文献の収集と整理を行なった。いわゆる「産後クライシス」という産後の夫婦に生じる葛藤について,国内外でこの時期に夫婦関係の満足感の大きな低減が生じることが複数の文献より確認できた。その理由については明確な知見(実証データ)は得られなかったが,子供が生まれたことによる環境要因が鍵であることが示唆された。実際,子供を持たない夫婦でも夫婦関係の満足度は低減するが,子供が生まれた夫婦ではその時期に急激な変化が起こることが複数の縦断研究で示されていることを把握した。また,これに関連して,性役割の問題が産後に大きくなることが示唆された。男性に比べ女性において夫婦関係の満足感が低いことがこれまでの多くの調査から指摘されているが,この背景には夫婦間での家事・育児分担の不平等の問題が指摘されている。特に,国内の研究では夫婦間の夫婦関係満足度の差が明確に,また繰り返し指摘されており,日本文化において特にこの傾向が強い可能性が考えられる。 「親への移行期」にある夫婦を支援する方法として,カップルセラピーについても文献研究をおこなった。カップルセラピーは欧米圏において発展してきたものであるが,日本人にこれが用いられた実証研究はみあたらない。日本文化への修正が必要と考えられるが,かなりの部分,日本でも使用できそうな部分があることが推察された。とりわけ,統合的な行動的カップルセラピー,ゴットマンによるプログラム,エモーショナリー・フォーカスト・カップルセラピーについては,欧米において実証的にその効果が確認されており,日本での使用にもある程度期待ができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
面接調査を予定していたが,コロナ禍に伴い,計画の変更を余儀なくされ計画の変更と遅れが生じた。ただし,文献研究を詳細におこなうことで,親への移行期にある夫婦を支援するための方法論についてはより明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
「親への移行期」において,夫婦関係の危機を体験したと同時に,その後,夫婦関係回復に関して何らかの気づきを得た男性および女性に対し,半構造化面接をおこなう。現在,倫理委員会に計画書を提出し,審査がおこなわれている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による研究の遅れにより次年度使用額が発生した。現在,具体的な研究の実施を進めており次年度,調査費および研究協力費として主に使用する。
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