本研究の目的は,これまで見過ごされがちであった精神的な不安傾向および発達障害の傾向にある学生を早期に発見し,安心して彼らを受け入れられる環境づくりの一助とするために,大学精神健康調査(UPI)および信州大学が開発した統合版困り感質問紙を融合した新たなスクリーニングテストを実施し,学生達の大学適応状況に関連付ける予測モデルを開発することであった。 まず,第1段階として,学生の不安・精神健康度や発達障害傾向に関するスクリーニングテストを作成した。これらは,以前から使用しているUPIと組み合わせて,以前のデータを使用できるようにした。第2段階として,全入学者に対するスクリーニングテストの実施した。ニューラルネットワークを用いた予測モデルを作成するためのデータセットを作り,分析精度を高めるために,以前のデータと合わせて使用する予定であった。しかし,コロナ初年度と重なってしまったため,調査時期のズレや,コロナの影響による不安傾向も十分に考えられたため,以前のデータと突き合わせずに,単年度ごとでの調査とした。第3段階として,テスト結果および大学適応状況の精査した。分析用のデータに,コロナ前のものを入れることはできなかったが,検討段階において,以前のものと比較しながら検討することができた。また,コロナ禍における学生のスクリーニングテストとしても機能できた。第4段階として,今回の精査結果に基づく不適応リスク予測モデルを構築した。最後に,要支援学生への支援体制の実態と予測モデルの活用方法の検討について,情報の共有や,秘密保持,活用の方法について,組織レベルで推進・活用方法を検討できた。
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