• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

生活習慣病予備軍への臨床心理学的介入は心理生物学的ストレス反応の軽減に寄与する

研究課題

研究課題/領域番号 20K03430
研究機関別府大学

研究代表者

矢島 潤平  別府大学, 文学部, 教授 (30342421)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード生活習慣病予備軍 / フィールド-実験統合研究 / 介入実践研究 / 援助要請スキル / ロールプレイ / メンタルストレステスト / 心理生物学的ストレス反応 / レジリエンス
研究実績の概要

本研究は,生活習慣病予備軍(不適切な生活習慣を送っている大学生)を対象に臨床心理学的介入による生活習慣の改善と心理生物学的ストレス反応の軽減との関連性を,フィールド調査,実験室実験及び介入実践研究にて検証することを目的としている。本年度は,フィールド-実験統合研究及び介入実践研究を実施した。
(フィールド-実験統合研究)大学生を対象に,GHQ-30等によって生活習慣病予備軍を抽出し実験参加者として実験室実験を実施した。実験は10分間の順応期,10分間のメンタルストレステスト(スピーチ課題と暗算課題),30分間の回復期にて行った。生活習慣病予備軍の心拍数やLF/HFは実験中常に高い状態にあり,ストレス負荷によりさらにそれが増強された。これらの知見は,望ましい生活習慣を実施していない個人における心理生物学的反応性は,望ましい生活習慣を実施している個人に比べ感受性が高く,負荷中の認知的混乱の強度も強いことを示唆している。
(介入実践研究)社会人を対象に日常場面で起こりそうな援助要請を必要とするロールプレイを体験した前後での変化を検証した。対象者を4人のグループに分け,ロールプレイ(台本①:援助要請失敗ロール,台本②:援助要請成功ロール)を実施し,グループごとのフィードバックを行った後,再び台本②を実施し,再度フィードバックを行った。ロールプレイ実施前後に援助要請スキル尺度,ストレス反応尺度及びレジリエンス尺度を測定した。介入後に,援助要請スキルとレジリエンスは有意に上昇し,心理的ストレス反応は有意に低減した。本研究の結果は,ロールプレイによって心理的ストレス反応低減させレジリエンスを高めることで,援助要請スキルを上昇さえる可能性を示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度までcovid-19の影響で実験室実験の実施に制限がかかったため,実践介入研究を中心に実施せざるを得なかった。本年度は,昨年度に感染対策を踏まえた実験室プロトコールにてノウハウを得たため,フィールド-実験統合研究によるストレス負荷実験を再開できた。
年度の後期には,covid-19への対応も変更となり,実験を計画通りに実施できるようになり,一定の研究成果を示すことができた。加えて,計画書作成当初予定していた実践介入研究よりも多くの研究プロジェクトを実施することができ,成果の一部は国内学会で発表した。
一部,バイオマーカーの測定が終わっていないなどの課題もあるが,次年度の研究に影響を及ぼす可能性は低く,研究は順調に進んでいると判断した。

今後の研究の推進方策

当初の研究スケジュールに従って,実施するが,本年度と同様にcovid-19の感染対策を考慮して,実験室研究の一部プロトコールの見直しや介入実践研究での介入方法の工夫を行いながら進めていく。特に令和5年度は,フィールド-実験統合研究を引き続き実施し研究成果を学会発表まで行いたいと考えている。対象者については,令和2年度及び令和3年度に実施したフィールド調査(質問紙のみ)にて生活習慣病予備軍と健康な生活を実施している群(対照群)の抽出はすでに終わっており,実験参加の内諾も終わっている。進捗状況の項で示したとおり,実験室研究のプロトコールは完成しているために,covid-19の感染状況を鑑みながら随時実施することとする。実験手続きとしては,対象者に実験室に入室後10分間の順応期,ストレス課題10分(スピーチ課題と暗算課題),回復期30分にて行う。ストレス課題前後と回復期後に唾液採取と気分に関する質問紙を実施するとともに,実験中,心拍,HF成分及びLF/HFを連続測定しその変化を捉える。
なお,介入実践研究については,本年度まである程度の成果を得ることができた。令和5年度では,介入機関を1ヶ月間に延ばして実施し更なる知見を得ることとする。対象者に,生活習慣改善のための心理教育,4週間のセルフモニタリングを含めたホームワークの実施,フィールドバック面接を行う。介入前後で生活習慣,ストレスに関する質問紙調査を実施しその変化を捉える。
研究成果については,国内の学会にて適宜報告する。

次年度使用額が生じた理由

covid-19による影響で,当初国際学会及び国内学会への旅費を計上していたが,オンライン開催や大会中止等により,使用しない費用が生じた。加えて,フィールド実験統合研究のプロトコールを見直したことによって,コルチゾールやs-IgAの測定キットを次年度に購入することになった。令和5年度では,covid-19の影響が少なくなるため,学会参加のための旅費やバイオマーカーの測定のための消耗品として使用する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 援助要請スキルに及ぼすロールプレイの効果2023

    • 著者名/発表者名
      河野桐香,矢島潤平
    • 雑誌名

      別府大学臨床心理研究

      巻: 19 ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 内省傾向が低い大学生に対する自己理解促進のアプローチ ―風景構成法を用いて―2023

    • 著者名/発表者名
      木村さゆり,石川須美子,矢島潤平
    • 雑誌名

      別府大学臨床心理研究

      巻: 19 ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 公認心理師の養成に向けた各分野の実習に関する調査2022

    • 著者名/発表者名
      野島一彦,川畑直人,藤城有美子,宮崎 昭,宮崎圭子,元永拓郎,矢島潤平
    • 雑誌名

      厚生労働省令和3年度障害者総合福祉推進事業報告書

      巻: 2022 ページ: 1-232

  • [学会発表] Relationship of reactive hyperemia-normalized pulse volume (RH-NPV) with eating behavior and sense of coherence according to sex.2023

    • 著者名/発表者名
      Horiguchi, M., Yajima, J., Ito, H., Tanaka, G., Maruyama, R., and Izawa, R.
    • 学会等名
      26th East Asian Forum of Nursing Scholars 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] 公認心理師のコンピテンシー調査について2022

    • 著者名/発表者名
      矢島潤平,川畑直人
    • 学会等名
      日本公認心理師養成機関連盟第11回研修会
    • 招待講演
  • [学会発表] 宇宙とメンタルヘルス2022

    • 著者名/発表者名
      矢島潤平
    • 学会等名
      別府大学大学院シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] ロールプレイによる社会人の援助要請スキルへの介入2022

    • 著者名/発表者名
      河野桐香,木津杏香,矢島潤平
    • 学会等名
      日本ストレスマネジメント学会第20回学術大会
  • [学会発表] 大学院の公認心理師養成における巡回指導-厚生労働省令和3年度障害者総合福祉推進事業よりー2022

    • 著者名/発表者名
      矢島潤平・藤城有美子・川畑直人・野島一彦・宮崎 昭・宮崎圭子・元永拓郎・鶴 光代
    • 学会等名
      第2回日本公認心理師学会学術集会
  • [学会発表] 大学院課程での公認心理師養成における学内実習施設の活用―厚生労働省令和3年度障害者総合福祉推進事業より―2022

    • 著者名/発表者名
      藤城有美子・矢島潤平・川畑直人・野島一彦・宮崎 昭・宮崎圭子・元永拓郎・鶴 光代
    • 学会等名
      第2回日本公認心理師学会学術集会
  • [学会発表] 論文執筆が進まない貴方へ朗報!行動医学論文の書き方教えます2022

    • 著者名/発表者名
      矢島潤平,滝澤宏和,中田光紀,濱口豊太
    • 学会等名
      第29回日本行動医学学会学術総会
    • 招待講演
  • [図書] 心理教育としての臨床心理学2023

    • 著者名/発表者名
      矢島潤平(分担執筆)
    • 総ページ数
      136
    • 出版者
      北樹出版
    • ISBN
      9784779307027
  • [図書] 神経・生理心理学2022

    • 著者名/発表者名
      矢島潤平(編者)
    • 総ページ数
      224
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      9784623087112
  • [備考] 矢島研究室のHP

    • URL

      https://galileo-aloha-lab.jimdosite.com/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi