研究課題
がんゲノムプロファイリング検査受検後に遺伝性腫瘍症候群の確定診断もしくはその疑いが判明した患者の心理的特徴を明らかとする尺度が必要であるが、患者の検査結果開示後の心理学的特徴を調査することに特化し、かつ、信頼性および妥当性が担保された日本語版質問紙は存在しない。そこで、海外で2002年に開発されたThe Multidimensional Impact of Cancer Risk Assessment(MICRA)の日本語版作成を試みた。本尺度開発者に日本語版作成許可を得たのちに、翻訳・逆翻訳の手順を経て日本語版が作成された。当該質問紙を利用し、遺伝性腫瘍症候群が疑われ、遺伝学的検査を受検した患者にアンケート回答を依頼した。すなわち、遺伝学的検査を受けた患者96名(その後同意撤回した2名含)から研究参加同意を受け、アンケートの回答を取得し、患者の遺伝学的検査結果開示後の結果ごと(遺伝性腫瘍症候群と「確定診断された(陽性)」「確定診断は得られなかった(陰性)」「病的意義不明のバリアントが検出された(VUS)」)の心理的特徴を調査した。現在、データ解析中である。また、がんゲノムプロファイリング検査を受検後に、遺伝性腫瘍症候群の確定診断を受けた患者、もしくは、遺伝性腫瘍症候群が疑われた患者における遺伝医療受診の障壁に関して調査した。調査結果については昨年度に学術集会報告したところであり、現在、臨床情報データの確定作業および最終解析・論文投稿の準備中である。
3: やや遅れている
研究開始時のコロナ感染症流行の影響もあり、患者および医療者(対面面接)を対象とした調査が予定よりも遅延していた。患者対象のアンケート調査は2023年度内に終了し、学術集会での中間報告を実施したところである。現在、調査結果の論文報告準備を進めている。医療者対象調査は、各種研究遂行や医療環境により未施行であった。
がんゲノムプロファイリング検査受診者のうち、遺伝性腫瘍症候群の確定診断を受けた患者および疑われた患者における遺伝医療受診障壁に関する調査結果は、論文報告のための準備を進めている。アンケート調査に関しては、データ固定およびデータ解析を進めており、2024年度内に論文化を行う。
2023年度において、研究実施および各種学術的情報収集(海外を含めた学術集会等の参加)を予定していたが、2020年冬季からのコロナ禍の影響やオンラインでの学術会議の普及もあり、旅費使用が予定よりも大幅に少なくなっている。研究遂行に際し、現地参加なしでの情報収集を行っている。人件費に関しても、直接雇用が難しい状況であった。今後、残額は論文投稿に関する諸経費に充当することを予定している。
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